木材を幾何学模様に組み合わせる「鹿沼組子」は、書院障子や欄間など和室の建具に用いられてきた。近年は壁面装飾やコースターなどの小物にも使われ、用途が広がっている。
その技術は江戸時代、日光東照宮造営のため全国から集まった木工職人によって伝えられたとされる。クギや金具を一切使わない。細かく割った木材に寸分の狂いもなく切り込みを入れ、熟練の職人が手作業で組み込む。栃木県からは伝統工芸品に、鹿沼市からは「かぬまブランド」に指定されている。
市内の「吉原木芸」では、31歳で創業した吉原幸二社長(75)と、3人の息子が腕を振るう。4人はいずれも県認定の伝統工芸士だ。
作業場を訪ねるとすがすがしい香りが漂っていた。特殊なかんなや金づちを用いて、主に鹿沼の杉やヒノキ、木曽ヒノキから組子を作る。伝統的な「麻の葉」や「七宝」など常用する模様だけでも100種類ほどある。試行錯誤の末に吉原さんが生み出した「
幾何学的な美を創造する奥深さに魅せられてきた吉原さん。修業時代を含め半世紀以上作り続けてきたが、飽きることはないという。「新たな模様に挑戦し、最後のパーツを入れる瞬間はいつも感動する」
近年は伝統工芸を見直す機運が高まり、4月に完成した鹿沼市役所の新庁舎の一部に、鹿沼組子が採用された。ただ中長期的に見ると、取り巻く環境は厳しい。和風建築の減少に伴い建具の注文が減っているためだ。鹿沼建具商工組合の白石修務理事長(64)によると「建具の出荷額は1990年代前半をピークに減少傾向が続いている」という。
類似品にも悩まされてきた。組合はブランド保護のため、特許庁が認定する「地域団体商標」の登録に向け準備を進めている。登録されれば、類似品が出回った場合に損害賠償請求などで対抗できる。
更なる高級化の兆しもある。外国産木材の市況が不安定化した「ウッドショック」に伴う国産木材の活用促進を背景に、組子に必要な
(文化部 竹内和佳子)
(2023年5月24日付 読売新聞朝刊より)
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