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2023.3.3

【ポケモン×工芸展作品紹介 1】ゲーム体験を作品に投影

企画展「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」が〔2023年3月〕21日、金沢市の国立工芸館で開幕する。陶磁、金工、ガラスなど工芸の各分野で活躍する作家20人がポケモンをモチーフに作品づくりに挑み、完成させた約70点を展示する。作家の横顔や作品の特徴、駆使した技巧などを紹介する。

 

◇ガラス◇ 池本一三さん (68)

(川崎市)

一昨年、主催者から出品を依頼された時、ポケモンに関する知識は「ピカチュウぐらい」。決めかねた。だが、資料とともに送られてきた家庭用ゲーム機が目に留まった。ゲームに縁はなかったが「ポケモンの世界を見てみようと思いました」。

多摩美術大教授の仕事の合間にゲームに挑み、半年後にチャンピオンに勝利し「殿堂入り」を果たした。もっとも出品を決めたのは、ポケモンを考案した田尻智さんの半生を記した本を読み、「子どもの頃、昆虫採集に夢中になった姿が自分と重なったから」。

ゲームを通して構想したイメージを鉢状のガラス作品3点に投影した。主人公の少年と相棒のサルノリらを描いた<冒険のはじまり>、ギャラドスたちが登場する<湖のほとりで>、アーマーガアら活躍したポケモン6匹がそろった<殿堂入り>。すべて絵がつながっており、絵巻物のようだ。

池本一三〈冒険のはじまり〉2022年 個人蔵 撮影・斎城卓

いずれも高さ50センチ、幅45センチ、奥行き45センチ、重さ25キロ。まずガラスを型に流し鉢状に焼成。これに下描きはせず、頭の中のイメージをもとにアルコールで溶いたエナメルの粉末を吹き付ける。余分な部分を、筆跡を残さないため点描を描くように筆で落として絵を仕上げていく。窯で焼き付けた後、別の色のエナメル粉末を吹き付け、同様の作業を繰り返す。窯入れはそれぞれ7~8回に上った。

京都市立芸術大で油絵を専攻した。卒業後の進路を心配した先生からステンドグラスの設計会社を紹介された。「フランスの画家ジョルジュ・ルオーもステンドグラスを手がけていた、と言われまして」。これが転機になった。光で空間が広がるステンドグラスに魅せられ、ガラス作家の道を歩み始める。

今回の作品では「ゲームやアニメとは違ったポケモンの世界観を楽しんでいただければ」と話していた。

▽会期 〔2023年〕3月21日~6月11日。休館は月曜(5月1日は開館)、5月14日。問い合わせはハローダイヤル050・5541・8600。
▽主催 国立工芸館、NHKエンタープライズ中部、読売新聞北陸支社
▽特別協力 株式会社ポケモン
▽制作協力 NHKプロモーション
© 2023 Pokémon.
©1995-2023 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.

(2023年3月2日付 読売新聞朝刊より)

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