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2021.2.7

国宝「直刀 黒漆平文大刀拵」(鹿島神宮蔵)修理進む―堅牢な漆との闘い

鹿島神宮(茨城県)の国宝「直刀ちょくとう 黒漆平文大刀拵くろうるしひょうもんたちこしらえ 」のうち拵の修理が、奈良国立博物館文化財保存修理所(奈良市)で進んでいる。

「黒漆平文大刀拵」の修理状況を確認する北村繁さん(右)と伊東哲夫・文化財調査官(奈良市で)

武神である鹿島の神の宝刀を収める拵(外装)は、黒々とした威容を作業台に横たえていた。

拵はさやつかなどの総称。黒漆塗り、総長2・7メートルで、遅くとも平安時代には作られたとされる。刀身は直刀で、刃の長さは2メートル超。鞘や柄にみられる文様の痕跡は、漆を塗り重ねて研ぎ出す「平文」の技法で獅子や瑞雲ずいうんを華麗に描き出したものと考えられている。金具は唐草文様を透かし彫りした金銅板を巻き、随所に立体的な花飾りを取り付ける。

漆の表面には細かい亀裂が入り、塗膜がはがれ落ちる危険性があった。漆工芸家で修理技術者の北村繁さん(49)(奈良市)が2019年6月から2年の予定で、表面のクリーニング、剥落はくらく止めなどにあたっている。

北村さんは「漆という素材は堅牢けんろうで、基本的に割れたところからしか処置できない」と修理の難しさを語る。亀裂の深さや状態によって手順や回数を変えながら、割れ目ににかわの水溶液をしみ込ませ落ち着かせた後、筆や綿棒を使ってほこりや汚れを除去する。その後、漆をしみ込ませ本体と固着させていく。

表面に残る文様…技法はナゾ

拵には謎も残る。黒漆表面にうっすら浮かぶ線状のくぼみから文様は見て取れるが、平文の金属片の痕跡がないためで、技法については研究者も首をひねる。修理に伴い、北村さんが凹みの形状や文様を描き起こす試みもなされた。

修理の進捗しんちょく確認と協議に立ち会った文化庁の伊東哲夫・文化財調査官は「総合的に診断し手当てしていただいた。こうした地道で着実な手当てによって、後世に伝えていける」と語った。

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