髙島屋の和菓子バイヤー・畑主税さんが、毎月の行事や旬の素材にちなんだ、とっておきの和菓子を紹介します。1月は、伝統ある和菓子界では比較的新顔の「いちご大福」。白いお餅に赤いいちごの組み合わせは、見た目にもかわいらしく、晴れやかな印象です。まずは、フルーツとあんという異色のコラボレーションが、人気商品になった背景を畑さんが探ります。
いちご大福が世に出回り始めたのは、いまから30~40年ほど前と言われます。どこが元祖かといった定説はないようで、今では小豆あんといちごの組み合わせは何の抵抗もなくなり、通年で販売しているお店もあるほどですが、きっと販売当初は異色なものという印象があったかと思います。
スタンダードな和菓子になった理由は、「ただ組み合わせればいい」と適当に作ったのではなく、「どのいちごが合うのか」「あんや餅生地はどうすればよりおいしくなるのか」と、それぞれのお店で工夫を重ねてきたからにほかならないと思います。そうした味わい深い商品をご紹介していきましょう!
群馬県高崎市「
大粒のいちごが丸ごと羽二重餅に包んであり、食べた瞬間、そのみずみずしさに驚くとともに、あんと餅生地とのバランスの素晴らしさにも圧倒されます。練乳が合わせられた白あんは主役のいちごを引き立てながら、ちゃんと脇役としての存在感もある。まさに名バイプレーヤーと言えましょう。
いちごは群馬県産の「やよいひめ」という品種で、断面が果実の中心まで赤いのが特徴。素材として納得できるいちごが入荷できないときは販売しない日もあるそうです。看板商品をしっかりと作り、守っていくということは、まさにそういうことなのだと思います。ご主人の熱い想いがあふれる菓子作りに感銘を受けました。
【微笑庵ちごもち】1個 税込み357円
微笑庵/群馬県高崎市剣崎町1038-4
TEL:027-343-3026
https://www.misyouan.com/
※販売期間は12月中旬~5月上旬の予定です。
香川県高松市「夢菓房たから」のいちご大福も、白あんと大粒のいちごの組み合わせ。ふっくらとした羽二重餅で丁寧に包まれています。二つ、三つと食べたくなるほどジューシー!
これだけでも十分満足なのですが、お店に伺った際、ショーケースをのぞいているとほかにも2種類のいちご大福があるのが目に留まりました。ひとつは、白あんをきれいな緑色の煎茶あんにアレンジした「煎茶いちご大福」。甘酸っぱい果汁が、煎茶のほろ苦さとよく合って、これもまたおいしい。もうひとつは、「いちご大福」の表面をそのままチョコレートでコーティングした「チョコいちご大福」です。パリッと割れる食感と共に、いちごとチョコレートは言うまでもなく相性ピッタリ。3種類ともに味わってみたくなるものです。
このほか、パイナップルやキウイ、季節ごとのフルーツ大福が並び、どの季節にも訪れたくなるお店です。
【いちご大福】1個 中サイズ(標準サイズ)税込み290円
夢菓房たから/香川県高松市春日町214
TEL:087-844-8801
https://e-takara.jp/
※いちご大福の販売期間は11月下旬~5月下旬。煎茶いちご大福(1個税込み300円)は4月中旬~5月中旬。チョコいちご大福(1個税込み340円)は12月中旬~5月中旬。フルーツの入荷状況により前後します。
島根県・
いちごは農園から直接仕入れているそうで、シャキッとしていて、とてもみずみずしい。その甘酸っぱい果汁を、まろやかな白あんがしっかりと受け止めていて、何度食べても飽きません。こうした、季節の恵みを生かした餅菓子は、どれも素材の上質さが際立っています。
【いちご大福】1個 税込み240円
三松堂/島根県鹿足郡津和野町森村ハ19-5
TEL:0856-72-1600
https://sanshodo.net/
※販売期間は1月中旬~3月下旬。入荷次第で前後します。
いちご大福を看板商品として通年で作っているお店の一つが隅田川のほとり、東京・中央区の
ポイントはこしあんの水分量で、こちらのものはやや多め。果実の水分とこしあんのみずみずしさのバランスが絶妙なので、あんといちごのおいしさが共に味わえます。
まだまだ寒い季節。いちご大福で春を先取りしてみてはいかがでしょうか?
【苺大福】1個 税込み216円
翠江堂/東京都中央区新川2-17-13
TEL:03-3551-5728
http://www.suikoudou.jp/
プロフィール
髙島屋和菓子バイヤー
畑主税
1980年生まれ、大阪府出身。2003年に髙島屋に入社し、洋菓子売り場の担当を経て、06年和菓子売り場の担当に。京都の和菓子を作りたてのままで提供したいという思いから、人気店の上生菓子を自ら京都で仕入れ、新幹線で運び、夕方に店頭に並べ話題を集めた。全国1000軒以上を巡り、食べた和菓子は1万種以上。著書に「ニッポン全国 和菓子の食べある記」(誠文堂新光社)。ブログ「和菓子魂!」(http://blog.livedoor.jp/wagashibuyer/) Twitter:@wagashibuyer
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