東京・国立劇場の初春歌舞伎公演(1月3~27日)は、尾上菊五郎さん、中村時蔵さんらが、通し狂言「四天王御江戸鏑」を上演する。土蜘蛛退治を主題に、炎の中での立廻りなど華やかな演出で新春を彩る。
平安時代中期を舞台に、武将・源頼光と家臣・渡辺綱ら四天王の活躍を描く。尾上松緑さん、尾上菊之助さんらが2011年に同劇場で200年ぶりに復活させた時とほぼ同じ顔ぶれで再演する。制作会見で菊五郎さんは、「10年前に評判のよかった芝居。今年はコロナの影響で大がかりな仕掛けができない分、面白さで負けないよう作り上げていきたい」と意気込んだ。
「四天王-」について菊五郎さんは、「三代目菊五郎が襲名披露で上演し、五代目菊五郎が『土蜘蛛』を作り、(鬼の)茨木も登場する。私の家(尾上菊五郎家)では、とても大事にしている作品」と語った。 前回と同じ、粋な鳶頭の綱五郎(実は渡辺源次綱)を演じる。
鬼母の茨木婆などを演じる時蔵さんは、「前回は茨木婆と源頼光をやりましたが、今回は頼光を息子(中村梅枝)に取られまして、一条院の役をいただきました。茨木は立廻りをする面白いお役で、菊五郎のお兄さんに腕を切られる、鬼滅のアレ……かもしれないですね」と笑いを誘った。
前回は菊五郎さんが演じた“ラスボス” 相馬太郎良門を、今回は松緑さんが演じる。相馬太郎は、平将門の息子。松緑さんは「私も関東の人間ですが、関東では将門は逆賊というばかりではなく英雄視されるようなところもある。国崩し(一国を乗っ取ろうとする大悪人)の風格をお客様に見ていただけるよう、努力したいです」と語った。
女郎花咲(実は土蜘蛛の精)などを演じる菊之助さんは「前回は女郎も土蜘蛛も演じ切れていない部分があったが、今回は 土蜘蛛のおどろおどろしさ、女郎の可憐さときれいさ、を、そして最後に出てくる大宅太郎光圀の武士らしさを大切に勤めたい」と意欲を見せた。
恒例の鏡開きや手ぬぐいまきは控え、幕開け後に舞踊「三番叟」を特別に上演し、舞台を清めて正月気分を盛り上げる。初春公演は流行のネタや人物が登場する遊び心のある演出が人気で、前回はAKB48のヒット曲が登場したが、今回は 昨年大みそかのNHK「第71回紅白歌合戦」にも出演した人気ガールズグループのダンスを菊之助さんらが踊るシーンや、人気漫画「鬼滅の刃」に関連したセリフなどが登場し、客席を沸かせる。
コロナ禍により上演形態などに制限がかかる現状について、菊五郎さんは「今は本当に歌舞伎が好きなお客様が見に来てくださっている。本当にありがたいことで……」と、約4秒間言葉を詰まらせた後、「感謝しながら、演じさせていただいております」とかみしめるように語った。
(読売新聞紡ぐプロジェクト事務局 沢野未来、写真も)
開催概要
日程
2021.1.3〜2021.1.27
正午開演(午後3時終演予定)
ただし、15日(金)は午後4時開演(午後7時終演予定)
※開場は開演の45分前の予定です。
国立劇場
東京都千代田区隼町4-1
1等席 10,000円(学生7,000円)
2等席 6,000円(学生4,200円)
3等席 3,000円(学生2,100円)
お問い合わせ
国立劇場チケットセンター(午前10時~午後6時)
0570-07-9900
03-3230-3000(一部IP電話等)
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