日本美を守り伝える「紡ぐプロジェクト」公式サイト

2021.7.26

【動画・京の国宝展ナビゲーター】吉岡里帆さんが語る京都の魅力 国宝に会いに「おいでやす」

7月24日から9月12日まで、京都国立博物館で開かれる紡ぐプロジェクトの特別展「京の国宝-守り伝える日本のたから-」では、女優の吉岡里帆さんが音声ガイド・ナビゲーターを務める。京都出身の吉岡さんは、展示される国宝にも興味津々。収録直後の吉岡さんに話を聞いた。

終始おちついた声で 熱心に収録

展覧会をより楽しめるとして、人気が高まっている音声ガイド。本展では、前期・後期のみ展示のものなどあわせて約30点の展示作品を紹介するほか、国宝の歴史や文化財保護の取り組みをわかりやすく解説する。

収録は都内のスタジオで行われた。吉岡さんは、「重要文化財」や「神宝」といった用語の発音や抑揚を担当者に何度も確認したり、「今のところ、少しアクセントがおかしかったと思うので、もう一度いいですか」と自ら録り直したり。「皆さん、ようこそおいでやす」といった京言葉も使いながら、終始落ち着いたトーンで語っていた。

京都が教えてくれた文化財へのまなざし

昨年4月にも収録を行っていたが、新型コロナウイルスの影響で展覧会が延期したため、再度、撮り直した。読み込んだ資料を手に、吉岡さんは「昨年は延期になってしまい残念でしたが、新たな作品も加わり、展覧会が開催できることを嬉しく思います。新鮮な気持ちでガイドをいれさせていただきました」と話す。

今回の展覧会では、京都ゆかりの国宝や重要文化財、皇室の至宝が展示される。「生まれ育った場所というのもあって、(文化財の多さを)とても誇らしく思います」と語り、「住んでいた時から、地元の方や学校の先生から、『文化財を守っていく』『後世に伝えていく』という意識を教わってきました。今回、音声ガイドの仕事に携わらせていただくのも光栄ですし、何より文化財がこれからも大切に大切に守られ、多くの方に楽しんでいただけたら、京都出身の1人としても嬉しいです」と目を細めた。

吉岡さんの注目作品は…

展示作品の中で気になった作品を聞くと、国宝「松に秋草図屏風」(京都・智積院蔵)をあげた。元々は京都にあった祥雲寺のふすま絵として、桃山時代に活躍した絵師・長谷川等伯が描いた作品。祥雲寺は、豊臣秀吉がわずか3歳で亡くなった長男・鶴松をしのんで建てた寺院で、絵に描かれているムクゲは、幼い子どもの死への悲しみが表現されているともされる。

「弔いの意味もあるという詳細もうかがって、より見てみたいなと思いました。(資料の写真で見ると)色みや雰囲気はすごく豪華なのに、どこか寂しい感じや静けさのようなものを感じ、とても興味がわきました」と吉岡さん。

国宝「松に秋草図屏風」長谷川等伯筆 京都・智積院蔵(7月24日~8月22日展示)

俵屋宗達の国宝「風神雷神図屏風」(京都・建仁寺蔵)も、何度か京都で見たことがあるといい、「いつ見てもダイナミックですね。今回は展示期間が短い(8月2日~9月5日)と聞いたので、その期間を狙って皆さんに見に来てほしいなと思います」。

書の名品に目を輝かせ

藤原道長の日記である国宝「御堂関白記」(陽明文庫蔵)や藤原定家の同「明月記」(冷泉家時雨亭文庫蔵)など、教科書でもおなじみの歴史上の人物による古文書や、書の傑作も数多く展示される。学生時代に書道を勉強していた吉岡さんは「本当にたくさんの名作が展示されますね、すごい」と目を輝かす。

「今回の書の作品の中で、私が気になったのは『雲紙本和漢朗詠集』(宮内庁三の丸尚蔵館蔵、7月24日~8月22日展示)です。私は『かな』がすごく好きなのですが、こちらは繊細な雰囲気があり、雲をイメージしたブルーの入った紙もとてもきれい。時がたっても味が消えないというのも美しいなと思いました。一番気に入っています」と話す。

雲紙本和漢朗詠集 下巻 宮内庁三の丸尚蔵館蔵( 7月24日~8月22日展示)(部分)
京の景色そのものも…

素晴らしい美術品や仏像にとどまらず、京都の町は国宝の建物も多いことに、吉岡さんは注目する。「展示される品々ももちろん美しくてすばらしいのですが、景色も国宝のようなものだと思います。下鴨神社(京都市左京区)はよく行きますし、南禅寺(同)の方丈も本当にきれいで。京都に来られたら一度は足を運んでいただきたいです」とほほえんだ。

音声ガイドの詳細は、公式サイトへ

吉岡里帆(よしおか・りほ)
1993年1月15日生まれ、京都市出身。2016年、NHK連続テレビ小説『あさが来た』で注目を集める。18年「きみが心に棲(す)みついた」で連続ドラマ初主演、19年映画「見えない目撃者」に主演し、翌年、同作品などの演技で日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。映画やドラマ、舞台のほか数多くのCMにも出演している。

(聞き手 読売新聞文化事業部 沢野未来、撮影 デジタルコンテンツ部 青山謙太郎)

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