三菱創業150周年を記念し、「三菱の至宝展」が
6月30日から東京・丸の内の三菱一号館美術館で開かれる。
1870(明治3)年に海運業を起こした
岩崎彌太郎から小彌太に至る、岩崎家の歴代社長が4代にわたって
継承・発展させてきたコレクションはまさに至宝。
世界に3点しか完品は確認されていない曜変天目をはじめ、
静嘉堂と東洋文庫の所蔵する国宝12点、
重要文化財31点を含む美術工芸品や古典籍を一挙に公開する。
さらに三菱経済研究所の所蔵品なども含め、
作品群計100点余りを鑑賞することのできる
貴重な機会となっている。
特別展に登場する作品の数々は、初代社長の岩崎彌太郎から、二代目・彌之助、三代目・久彌、四代目・小彌太によって収集された。そのコレクションの特徴は、岩崎家の“社会貢献”に対する強い思いが反映されていること。彼らは、当時の学者や芸術家との交流を通じて文化財の保護に大きな関心を抱き、単なる好事家としてではなく、「実業家として蓄えた富を社会に還元する」という広い視野に立った、起業家スピリッツあふれる学術的な収集を行った。彌之助、久彌、小彌太はいずれも海外留学を経験し、国際的な感覚を持ち合わせていたこともコレクションに影響した。欧米の実業家たちのフィランソロピーに学び、事業で得たものを社会へ還元することを自分たちの使命だと考えたからだ。
例えば、彌之助は明治の西欧文化を偏重する風潮の中で、東洋固有の文化財の収集活動を始め、東京の神田駿河台に静嘉堂文庫を創設。また、巨万の富を社会に広く還元した米国の実業家アンドリュー・カーネギーの著書「富の福音」に共感し、日本語の翻訳版を出版させたほどだ。小彌太は三菱グループが今に受け継ぐ共通の経営理念「三綱領」をまとめ、その一つに「所期奉公」を掲げ、
事業を通して社会への貢献を図ることを強調している。そうした岩崎家四代目・小彌太の思いも今回の展示品には色濃く反映されている。