2026年度の「紡ぐプロジェクト」修理助成事業は、宮城県から重要文化財「
瑞巌 寺本堂墨絵の間障壁画」(瑞巌寺蔵)、福岡県から同「不空羂索 観音立像」(観世音寺蔵)、高知県から同「大威徳明王 像ほか12件」(竹林寺蔵)が申請された。修理助成対象となった計7件はいずれも劣化が進み、絵画3件は本紙の亀裂や糊 の劣化、仏像3件は漆箔 層の浮き上がりや虫食いなどが見られる。貴重な文化財を後世に伝えるため、素材を調査し、最善の修理方法を検討したうえで、1年~数年の作業に着手する。

瑞巌寺は1609年、仙台藩祖・伊達政宗が建立した。国宝の本堂を飾る
同寺は1985年、傷みが著しい原本を修理するとともに、新しい襖161面への復元模写を開始。10年余りかけて、当初の華麗な色彩を本堂によみがえらせた(修復した原本は同寺宝物館で保存)。重要文化財に指定されている障壁画は、板戸絵などを合わせて211面に上る。


今回、修理助成対象となった「墨絵の間」の障壁画はその際、復元模写が困難だとして、部屋には修理した原本が戻された。それから約30年たち、浮きやはがれが進行。放置すれば、亀裂の広がりや剥落を避けられないため、襖(縦約2メートル、横約88センチ)20面、障子腰貼り付け(縦約28センチ、横37センチ)2面に剥落止めなどの処置を施す。修理は5年計画で進める。
本堂奥にある「墨絵の間」は、住職の応接間だったとされる。宗教儀式を営む「
押された落款からわかる作者、吉備幸益は生没年不詳。現存作品が少なく、「謎の絵師」とされる。

「紡ぐプロジェクト文化財維持・修理助成事業」選考委員の増記隆介東京大准教授(美術史学)は、幸益を、「室町時代から戦国時代にかけて関東地方で活躍した画僧、
雪村は、その大胆な筆致から、江戸期の伊藤若冲ら「奇想の画家」の源流とも位置づけられる。増記准教授は「狩野派などの絵だけでなく、雪村系の絵も配したところに、伊達政宗の好みが感じられる。雪村の画風が関東、東北で継承されていたことがわかる貴重な作例だ」と指摘する。
松島湾に面した同寺は、東日本大震災の津波が参道まで押し寄せ、塩害により杉並木の多くを失った。だが、現在は植樹した若木が育つ。
吉田

(2026年1月11日付 読売新聞朝刊より)
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