2026年度の「紡ぐプロジェクト」修理助成事業は、宮城県から重要文化財「瑞巌寺本堂墨絵の間障壁画」(瑞巌寺蔵)、福岡県から同「不空羂索観音立像」(観世音寺蔵)、高知県から同「大威徳明王像ほか12件」(竹林寺蔵)が申請された。修理助成対象となった計7件はいずれも劣化が進み、絵画3件は本紙の亀裂や糊の劣化、仏像3件は漆箔層の浮き上がりや虫食いなどが見られる。貴重な文化財を後世に伝えるため、素材を調査し、最善の修理方法を検討したうえで、1年~数年の作業に着手する。
鎌倉時代作 蒔絵の鞍で最古級
梅竹蒔絵鞍は、ケヤキ材に黒漆が塗られ、前輪と後輪に蒔絵による装飾が施された鎌倉時代の鞍。古代~中世の鞍は、薄く切った貝殻をはめ込む「螺鈿」で飾られたものが多く、蒔絵の鞍としては現在知られている中で最古級の作例という。
蒔絵は、表面に漆で絵を描き、金粉などを振りかけて文様を表現する日本独自の装飾技法。前輪と後輪の外側には竹枝と梅枝の文様、内側には竹枝の文様が金蒔絵で表されている。梅花部分は錫の粉を使った蒔絵で表現され、錫による蒔絵は現存例が少ない点からも貴重だ。
鎌倉幕府の記録「吾妻鏡」には建久2年(1191年)12月に源頼朝が鹿島神宮に馬を奉納したという記述があり、社伝ではその時に奉納された鞍とされる。形状や装飾技法から実用的な鞍ではなく、神事で使われたものとみられるが、有力な武士によって奉納された可能性は高い。
蒔絵部分は錆や摩滅で劣化し、漆膜にも亀裂が見られる。前輪と後輪、乗り手が座る「居木」は、ひもが緩んで不安定な状態になっており、2018年から茨城県立歴史館に寄託されている。
修理では鞍を解体し、埃除去や漆の剥落止めなどを行い、再度組み立てる。28年3月までに修理完了を目指す。修理後は32年までに完成予定の同神宮のミュージアムで公開する方針だ。
(2026年1月11日付 読売新聞朝刊より)