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2025.5.10

【修理リポート】重要文化財「東妙寺文書」(佐賀・東妙寺蔵)― 1通ずつ補修 文字すっきり

修理された文書を確認する早田空順住職(中央)

「紡ぐプロジェクト」の助成対象として修理を進めていた国宝4件、重要文化財4件が、2024年度の作業を終えて、所蔵元などに戻った。今月〔2025年5月〕と来月の2回にわたり、修理の詳細をリポートする。

重要文化財「東妙寺文書」の修理が完了し、〔2025年〕2月、所蔵する東妙寺(佐賀県吉野ヶ里町)の早田空順住職(53)の立ち会いのもと、寄託先の佐賀県立博物館に納品された。同館で保管され、今後は展示も検討される。

文書は、14世紀前半の後醍醐天皇による綸旨りんじや足利義満の御教書みぎょうしょなど32通が3巻の巻物に仕立てられていた。汚れが付着し、虫食いによる欠損などが見られたことから、2022年4月から約3年間かけて修理がなされた。

「修理工房 宰匠ざいしょう」(福岡県筑紫野市)が、巻物を解体して1通ずつの状態に戻し、汚れを取って、欠失部分を補修。和紙で1通ずつをはさむなどし、きり箱に収め、保管できるようにした。箱は酸化などを防ぐため、空気に触れにくいように作られているという。

宰匠の竹内友希子・主任技師(53)は「調査、検討を重ねた上で修理をしてきた。整った環境で保存されるならば、100年以上維持できると思う」と手応えを語った。

文書を1通ずつ確認した早田住職は「表面が毛羽立っていた文書が、パッと明るくなり、文字もすっきりと見えるようになった。今後は研究での活用や、修繕の過程が伝わるように展示もして、文化財がどう維持されているかを多くの人に知ってもらいたい」と話した。

(2025年5月4日付 読売新聞朝刊より)

紡ぐプロジェクトとは

国宝や重要文化財、皇室ゆかりの名品、伝統文化、技術などを保存、継承していく官民連携の取り組み。文化庁、宮内庁、読売新聞社が2018年に開始した。展覧会の収益の一部や、企業からの協賛金などを活用し、文化財の修理を助成し永続的な「保存・修理・公開」のサイクル構築を目指す。これらの文化財の魅力や修理作業の経過に加えて、次世代に伝える伝統芸能、工芸の技術などを、紙面やサイトを通じて国内外へ情報発信している。

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