日本美を守り伝える「紡ぐプロジェクト」公式サイト

2023.6.8

【修理リポート】重要文化財「障壁画」(和歌山・草堂寺蔵) 応挙、芦雪の14面 5年がかり 

「紡ぐプロジェクト」23年度修理助成 貴重な宝 後世に

今年度〔2023年度〕の「紡ぐプロジェクト」助成対象となった重要文化財3件の修理が始まった。剥落はくらくのおそれや虫食いなどの劣化を食い止めるため、数年にわたって慎重に作業を進める予定だ。継続事業2件の進捗しんちょく状況も紹介する。

搬出前に「松月図」を点検する磯崎住職(左)ら

和歌山県白浜町の草堂寺所有で、県立博物館(和歌山市)保管の重要文化財「障壁画」のうち14面が〔2023年〕4月、修理を担当する「松鶴堂」(京都市)へ運び出された。約5年をかけて修理する。

円山応挙と長沢芦雪ろせつの1785~87年の作で、全部で71面5隻に動物や自然などが大胆な構図で描かれている。制作年代がわかり、応挙と芦雪の画歴をたどる上で極めて貴重とされる。

今回修理するのは、芦雪の襖絵ふすまえ「張良吹笛図」「征師図」「朝顔図」、天袋に描いた応挙の「松月図」の14面。昭和初期以降は本格的な修理が行われず、シミや虫食いなどの劣化がみられるため、クリーニングや解体しての修理を予定している。

搬出作業には、同寺の磯崎泰寛住職(52)や博物館の学芸員らが立ち会い、損傷具合を点検した後に送り出した。磯崎住職は「きれいな状態にしてもらい、多くの人に見ていただきたい」と話した。

紡ぐプロジェクトとは

国宝や重要文化財、皇室ゆかりの名品、伝統文化、技術などを保存、継承していく官民連携の取り組み。文化庁、宮内庁、読売新聞社が2018年に開始した。展覧会の収益の一部や、企業からの協賛金などを活用し、文化財の修理を助成し永続的な「保存・修理・公開」のサイクル構築を目指す。これらの文化財の魅力や修理作業の経過に加えて、次世代に伝える伝統芸能、工芸の技術などを、紙面やサイトを通じて国内外へ情報発信している。

(2023年6月4日付 読売新聞朝刊より)

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