首里城正殿などには琉球の「手わざ」が至る所に施されていた。外壁、柱は漆塗りの上に金箔などで飾り、屋根の「龍頭棟飾」は陶磁、龍柱は石の彫刻、国王の座所は華やかな織物で飾っていた。今回の正殿復元工事は、地元沖縄で継承する伝統技術を生かし、次世代に伝えていく取り組みも合わせて進めている。柱に使う材木を確保するため100年後を見据えた植林活動も始まった。被災した美術工芸品の修理へ人材確保も必要だ。首里城復元は、琉球の美を守り継ぐための「未来への投資」でもある。
平成に復元した首里城正殿は、2階内部の「
2020年までに「琉球国王尚家関係資料」の修理が進み、扁額制作の記録が明らかになったため、有識者の検討委員会で地板を本来の黄色にすると決めた。
制作を担当するのは、県指定無形文化財「琉球漆器」の技術保持者の諸見由則さん(62)。漆器メーカーに勤務したが、首里城の修理に携わる機会を得て、今の仕事に転じた。14年には「漆芸工房」を設立し、独立した。社員は9人。火災を免れた首里城の広福門の塗り直しなどの作業にあたっている。
扁額の地板を仕上げるには、下地を塗って磨いてを20回以上繰り返す。若い職人には、使う漆の調合やへらなどの道具の使い方まで丁寧に教える。「首里城の火災は悲しいことだけれど、若い人を育てるチャンスでもある。技を伝えて、人づくりをしておけば何があってもよみがえらせることができる」と諸見さんは力を込めた。
(2023年11月4日付 読売新聞朝刊より)
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