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2025.10.2

【修理リポート】重要文化財「釈迦三尊像」(愛知・林泉寺蔵)― 古い補修絹 全除去へ

クリーニングを済ませた重要文化財の仏画「釈迦三尊像」に見入る丹羽康道住職(手前)(京都国立博物館で)

2025年度の「紡ぐプロジェクト」修理助成対象に選ばれた林泉寺(愛知県碧南市)所蔵の仏画、重要文化財「釈迦三尊像」について同寺、文化庁、愛知県、碧南市の担当者が〔2025年〕7月9日、京都国立博物館文化財保存修理所(京都市東山区)で今後の修理方針を協議する会議を開いた。

釈迦三尊像は縦約83センチ、横約39センチ。中央に釈迦如来、向かって右に白象に乗る普賢、左に獅子に乗る文殊の両菩薩ぼさつを描いた13世紀前半の作品と推定されている。線状に切った金箔きんぱくなどを貼り付けて描く「截金きりかね文様」の当時の最高技術を用いているのが特徴。

この日は修理を行う「光影堂」(同市下京区)の担当者が本紙を詳細に調べ、損傷箇所を示す図面を作製。表装のきれを解体し、本紙に水分を噴霧して汚れを取るクリーニングを実施するなど、これまでの経過を報告した。この過程で後世の補筆(加筆)が少ない仏画であることなどがわかった。

協議の結果、古い補修絹を全て除去し、本紙の欠失箇所と古い補修絹の除去箇所に、同じ色味の新たな絹を補うことを決めた。

丹羽康道住職(60)は「作品そのものへの後世の補筆が少なかったことは何よりと感じた。古い補修絹を全除去することで、仏画がどれだけすっきり見えるようになるか、今から楽しみだ」と語った。

(2025年9月7日付 読売新聞朝刊より)

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