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2025.7.11

【修理リポート】重要文化財「釈迦三尊像」(愛知・林泉寺蔵)― 各所で絹の欠失 全体に横折れも

紡ぐプロジェクト 2025年度修理助成

釈迦三尊像の損傷部分などをチェックする林泉寺の丹羽康道住職(右)(藤井達吉現代美術館で)

「紡ぐプロジェクト」の2025年度修理助成対象に選ばれた国宝2件、重要文化財3件の修理に向けた取り組みが始まった。それぞれの所蔵元から搬出される様子などをリポートする。

林泉寺(愛知県碧南市)の重要文化財の仏画「釈迦三尊像」が〔2025年〕4月9日、修理のため、寄託先の愛知県碧南市藤井達吉現代美術館から京都国立博物館文化財保存修理所(京都市東山区)へ運び出された。

釈迦三尊像は縦約83センチ、横約39センチ。中央に釈迦如来、向かって右に白象に乗る普賢、左に獅子に乗る文殊の両菩薩を描いた13世紀前半の制作と推定される仏画。平安後期の影響を残す繊細優美な画風に仕上げられ、線状に切った金箔きんぱくなどを貼り付けて描く「截金きりかね文様」は当時の最高技術が用いられている。

しかし経年劣化により絵の描かれた絹の欠失が各所に見られるほか、全体に横折れが発生し、亀裂が進行している部分も見つかっている。

このため、絹に直接施された古い裏打紙「肌裏紙」を除去し、欠失部分には補修用の絹を充てるなどの修理を2年計画で行う。

林泉寺の丹羽康道住職(60)は「2024年の重文指定をきっかけに、本格的な修理を行うことになり本当にありがたい。専門の技師が最高の修理をしてくれると思っており、2年後にどんな姿を見せてくれるのか楽しみだ」と話した。

(2025年7月6日付 読売新聞朝刊より)

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