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2025.10.24

【修理リポート】国宝「阿弥陀聖衆来迎図あみだしょうじゅらいごうず」(和歌山県高野町・有志八幡講蔵)— 新しい補修絹への補彩 ほぼ完了

国宝「阿弥陀聖衆来迎図」の修理状況を確認する大森照龍館長(左)ら

2021年度から5年計画で修理を進めてきた有志八幡講(和歌山県高野町)所蔵の国宝「阿弥陀聖衆来迎図あみだしょうじゅらいごうず」について、来迎図を保管する高野山霊宝館、文化庁、和歌山県の担当者らが〔2025年〕8月26日、大津市の坂田墨珠堂で会議を開いた。来年3月の修理完了に向けて作業内容を確認した。

来迎図は縦約2メートル、3幅合わせた横幅は約4メートルに及ぶ平安仏画の傑作。もとは比叡山にあったが、織田信長の比叡山焼き打ちを契機として高野山に移された可能性がある。

これまでに解体、クリーニング、剥落はくらく止め、本紙を支えるため裏面に直接貼った古い「肌裏紙はだうらがみ」の除去、新しい肌裏紙とその次に貼る「増裏紙ましうらがみ」の裏打ちなどを実施してきた。

文化財絵画の修理では一般に、オリジナルの部分を残し、後世の旧補修絹などの除去を基本とするが、今回の修理では今日まで伝わってきた作品のイメージを大きく変えないようにするため、オリジナルと一体化した旧補修絹を残す方針を採用。作品の保存上不具合が生じる旧補修絹のみを除去し、この除去部とオリジナルの欠損部に新しい補修絹を施した。

この日は、修理を手がける技師から、新しい補修絹への補彩がほぼ完了したことなどが報告された。修理後の本紙全図、表具全図について高精細撮影を行うことも確認された。

高野山霊宝館の大森照龍館長(64)は「表装に使う予定のきれを添えてみたことで、修理完了時の来迎図のイメージが湧いた。また補彩を施したことで、阿弥陀如来をはじめ周りの菩薩ぼさつなどがとても見えやすくなった。今後の公開方法についても検討したい」と話した。

(2025年10月5日付 読売新聞朝刊より)

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