文化庁は今年〔2023年〕度、文化財の保存に不可欠な選定保存技術の保持者に「表装建具製作」の臼井浩明さんと1団体を追加認定した。また、新たに「表装
裂 製作」など3件を選定保存技術に選び、「文化財修理表装裂継承協会」など2団体と保持者2人を認定した。
「表装建具製作」 臼井浩明さん 51 (大津市)
「表装建具製作」の保持者として追加認定され、「文化財修復の一連の流れの中に加わったことの重大さを認識すると同時に、次の世代に技術をつなぐという難しい問題を乗り越えていきたい」と気を引き締める。
表装建具は、
一般企業に就職後、「手に職をつけたい」と木工の世界へ飛び込んだ。茶道指し物、調度指し物、建具の工房で修業し、様々な技術を体得し、「表装建具製作」保持者だった黒田俊介さん(79)に師事。2012年から、黒田工房(大津市)で表装建具を手がけるようになり、材料の吟味、組み立てで高い評価を得た。15年から黒田さんの後を継いで同工房代表を務める。
「伝統的技術を守るだけでなく、現代のアイデアを勉強して文化財保護にフィードバックしていきたい」
「表装裂製作」 文化財修理表装裂継承協会(京都市)
今年度新たに選定した選定保存技術のうち「表装裂製作」の保存団体として認定を受けた。
表装裂は、国宝や重要文化財の絵画、書跡などを掛け軸や屏風に仕立てるのに使う織物。文化財を引き立てる脇役ながら、文様や色彩、時代などを考慮した高い品格を持つことが不可欠だ。
田中淳史理事長(56)は「選定保存技術の保存団体に認定され、果たすべき役割の大きさを痛感している。会員一人一人が誇りを持って専門技術を発揮できるよう支援体制を築いていきたい」と話す。
ただ、分業化が進み、細分化した個々の分野で専門性の高い技術が必要で、技術の伝承が危機に直面している分野もある。生糸の調達など材料枯渇も深刻だ。
このため、今年6月に協会が発足した。織物設計、染色、
田中理事長は「一つの技術が途絶えても表装裂の製作全体に影響が及ぶ。文化財を後世に伝えるため、個々の分野で伝承者の養成を着実に進めていきたい」と強調した。
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このほか、「能装束製作」の能装束製作技術保存会(佐々木洋次会長、京都市)を追加認定。新たな選定保存技術として「手織中継表製作」の保持者、
(2023年11月4日付 読売新聞朝刊より)
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