今年度〔2024年度〕から3年計画で修理が始まった
本作は、聖徳太子が推古天皇の命により、蘇我馬子ら4人の前で勝鬘経という経典を講義する場面を描いており、聖徳太子信仰の広がりを示す重要な作品として位置づけられている。
鎌倉時代(13世紀後半)の制作とされ、縦約114センチ、横約63センチ。各人物の顔は明瞭に描き分けられ、太子がまとう衣の柔らかな朱色など、画面全体は落ち着いた配色でまとめられている。
作品全体に、きつい横折れが多数確認されている。前回の修理は、100年以上前の1918年(大正7年)。修理を担当する「松鶴堂」(京都市東山区)によると、他の作品に使われた古い絹で補修した箇所が多数あることが判明した。
一般に修理では、前回の補修部分を除去した上で、新たな補修を施し、よりオリジナルに近いものを目指すことが多い。しかし、前回修理が本紙になじんだ丁寧なものだったことから、この部分を残す方向で修理を進めることが決まった。
寺井
(2024年12月1日付 読売新聞朝刊より)
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