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2024.12.4

【修理リポート】重要文化財「聖徳太子勝鬘経講讃図しょうまんぎょうこうさんず」(三重・西来寺せいらいじ)— 100年以上前の補修生かす

文化庁の担当者から修理方針について説明を受ける寺井良宣住職(右)

今年度〔2024年度〕から3年計画で修理が始まった西来寺せいらいじ(津市)所蔵の重要文化財「聖徳太子勝鬘経講讃図しょうまんぎょうこうさんず」について、所蔵者、文化庁、三重県、津市の担当者らが10月30日、京都国立博物館文化財保存修理所(京都市東山区)に集まり、今後の修理方針を確認した。

本作は、聖徳太子が推古天皇の命により、蘇我馬子ら4人の前で勝鬘経という経典を講義する場面を描いており、聖徳太子信仰の広がりを示す重要な作品として位置づけられている。

鎌倉時代(13世紀後半)の制作とされ、縦約114センチ、横約63センチ。各人物の顔は明瞭に描き分けられ、太子がまとう衣の柔らかな朱色など、画面全体は落ち着いた配色でまとめられている。

作品全体に、きつい横折れが多数確認されている。前回の修理は、100年以上前の1918年(大正7年)。修理を担当する「松鶴堂」(京都市東山区)によると、他の作品に使われた古い絹で補修した箇所が多数あることが判明した。

一般に修理では、前回の補修部分を除去した上で、新たな補修を施し、よりオリジナルに近いものを目指すことが多い。しかし、前回修理が本紙になじんだ丁寧なものだったことから、この部分を残す方向で修理を進めることが決まった。

寺井良宣りょうせん住職(75)は「時代ごとの最善の方法で修理を重ね、文化財が今日に伝わってきたことを痛感した。最新の知見を集めて修理してもらえるのは大変ありがたいこと」と語った。

(2024年12月1日付 読売新聞朝刊より)

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