日本美を守り伝える「紡ぐプロジェクト」公式サイト

2024.5.10

【修理リポート】重要文化財「薬師如来坐像」(京都・六道珍皇寺蔵)― 平安前期の「一木造り」

「紡ぐプロジェクト」修理助成 作業終了、在るべき所へ

「紡ぐプロジェクト」の助成対象として修理を進めていた文化財が、2023年度の作業を終え、次々に所蔵元に戻った。随心院の「金剛薩埵坐像こんごうさったざぞう」や宝積寺の「十一面観音立像」は漆箔しっぱく剥落はくらく止め、西福寺の「蓮池図」は折れの修理などに多くの力を注いだ。

修理を終えて安置された「薬師如来坐像」

重要文化財「薬師如来坐像」は約130年ぶりの修理を終えて〔2024年〕3月、所蔵元の六道珍皇寺ろくどうちんのうじ(京都市東山区)に戻った。

これまで、頭部は平安前期、体部は後世に補われたものと考えられていたが、今回の修理により、頭部も体部も平安前期の作であることが確認された。直径120センチを超える大木から彫り出した「一木造り」で、像の内側のくりぬいた部分は、鉛を熱して作る「鉛丹えんたん」と呼ばれる顔料で赤く塗られていたのもわかった。

修理では、顔の部分の表面の浮き上がりを抑えるなどしたため、坂井田良宏住職(77)は「お顔が柔和になられた」。

修理に並行して、収蔵する薬師堂の屋根瓦をふき替えるなど、保存環境の整備も進めた。4月17日には記念の開眼法要が営まれ、同寺が属する臨済宗建仁寺派の小堀泰巌管長らが参列した。あす6日まで一般公開する。

(2024年5月5日付 読売新聞朝刊より)

Share

0%

関連記事