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2023.5.11

【修理リポート】国宝「阿弥陀如来坐像」(京都・浄瑠璃寺蔵) 制作当初の材料生かす

浄瑠璃寺(京都府木津川市)が所蔵する国宝「阿弥陀あみだ如来にょらい坐像ざぞう」(九体阿弥陀)の修理が〔2023年〕3月で完了した。奈良国立博物館(奈良市)の文化財保存修理所で18年度から5か年計画で進め、最後に残った第1仏、第8仏が修理を終えた。

修理を終えた九体阿弥陀のうちの第1仏(右)と第8仏(奈良国立博物館で)=文化庁提供

浄瑠璃寺は平安時代、貴族の間で流行した浄土教信仰の景観を伝える寺院。「阿弥陀如来坐像」は、中央の最も大きな「中尊」の左右に4体ずつ並ぶ形で、平安時代に遡る国内唯一の貴重な尊像という。

担当した「美術院」によると、前回の明治時代の修理から100年以上が経過し、これまで修理した部分の変色、金箔きんぱくの浮き上がりなどが顕著になっていた。橋本麿嗣まろつぐ・主任技師は「剥がれ落ちた漆箔も、落ちた部分がわかれば可能な限り元の位置に戻すなど、制作当初の材料を生かして丁寧な修理を心がけた」と語った。

浄瑠璃寺の佐伯功勝こうしょう住職(61)は「5年間はあっという間だった。修理を通じてわかったことは、参拝者にも伝えていきたい」と話していた。

(2023年5月6日付 読売新聞朝刊より)

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