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2024.8.20

【修理リポート】 重要文化財「仏涅槃図ぶつねはんず」(岡山・遍明院蔵)― 新しい肌裏紙 淡い色に

「仏涅槃図」を前に、肌裏紙の見本を手にする修理担当技師と、どちらを採用するか協議する所蔵者ら

2023年度から2年計画で修理を進めている遍明院(岡山県瀬戸内市)所蔵の重要文化財「仏涅槃図ぶつねはんず」について、所蔵者、文化庁、岡山県の担当者らが〔2024年〕7月19日、京都国立博物館(京都市東山区)文化財保存修理所に集まり、今後の修理方針を協議した。

仏涅槃図は縦約163センチ、横約153センチ。釈迦涅槃の場面のほか七つの情景が描かれており、鎌倉時代中頃の作とされる。1931年(昭和6年)の修理後、90年以上が経過しており、本紙には横折れが走り、絹が浮き上がっている箇所が見つかるなど本格的な修理の必要に迫られていた。

これまでの1年間の作業では、解体したうえで汚れの除去、剥落はくらく止め、絵を描いた「絵絹」の裏面に貼られた古い「肌裏紙」の除去などを実施。絵絹の裏面を見ながら協議を進めた。

「仏涅槃図」の表装に使用する裂を織る工房で担当者から説明を聞く黒井覚然住職(右から2人目)

作業を担当する光影堂(京都市下京区)によると、絵絹の裏面に裏打ちされた和紙は、技術力の高い技師が丁寧に手がけたとみられるという。

この日は新しい肌裏紙についても協議。濃淡の異なる2種類の染め色の候補から、淡い色を採用することに決めた。また、本紙を表装するきれを織る京都市内の西陣織の現場も訪ねた。

黒井覚然住職(57)は「過去の修理が技術力の高い技師によって行われ、歴代住職が涅槃図を大切にしてきたことを知った。後世にしっかりと継承していかなければと改めて感じた」と語った。

(2024年8月17日付 読売新聞朝刊より)

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