「紡ぐプロジェクト」の助成対象として修理を進めていた国宝4件、重要文化財4件が、2024年度の作業を終えて、所蔵元などに戻った。今月〔2025年5月〕と来月の2回にわたり、修理の詳細をリポートする。
遍明院(岡山県瀬戸内市)所蔵の重要文化財「仏
同寺所蔵の仏涅槃図は縦約163センチ、横約153センチ。釈迦涅槃の場面のほか七つの情景が描かれ、鎌倉時代後半の制作とされる。1931年の修理後、90年以上が経過し、本紙には横折れが走り、絹が浮き上がっている箇所が見つかるなど本格的な修理の必要が見込まれた。このため2023年度から2年計画で修理を進めていた。
修理を担当した「光影堂」(京都市下京区)によると、絵が描かれている「絵絹」と、裏側に貼った「肌裏紙」との間に茶色い層(色のり)が見つかり、これが鑑賞の妨げとなっていたため、その除去に多くの時間をかけた。また、後世の修理で補った絹を、人工的に強度を弱めた電子線劣化絹と入れ替える作業などにも腐心した。
修理後の仏涅槃図を確認した黒井覚然住職(58)は「節目ごとに専門家の皆さんと修理の進め方を協議してきた。そこで選択してきたことが見事に結実した。お寺の
(2025年5月4日付 読売新聞朝刊より)
紡ぐプロジェクトとは 国宝や重要文化財、皇室ゆかりの名品、伝統文化、技術などを保存、継承していく官民連携の取り組み。文化庁、宮内庁、読売新聞社が2018年に開始した。展覧会の収益の一部や、企業からの協賛金などを活用し、文化財の修理を助成し永続的な「保存・修理・公開」のサイクル構築を目指す。これらの文化財の魅力や修理作業の経過に加えて、次世代に伝える伝統芸能、工芸の技術などを、紙面やサイトを通じて国内外へ情報発信している。
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