2025年度の「紡ぐプロジェクト」修理助成事業には、能登半島地震の被災地、石川県から初めて申請があった。重要文化財「不動明王坐像」(法住寺蔵)だ。滋賀県から申請があった重要文化財「石山寺多宝塔柱絵」(石山寺蔵)は、国宝建造物に描かれた絵画を現地の建物内で修理する、紡ぐプロジェクトとしては初の取り組みとなる。貴重な文化財を未来に伝えるため、困難なケースであっても最善の修理方法を検討し、現代の最高水準の技術で作業を進めていく。
大報恩寺の地蔵菩薩立像は像高約163センチ。カヤとみられる針葉樹材。一木からある程度彫り出した像にノミを入れ、前後に木目に沿って割り、寄せ木造りと同程度に内側をくりぬき、再び矧ぎ合わせる「一木割り矧ぎ造り」と呼ばれる技法で仕上げている。
鎌倉時代は運慶や快慶など慶派仏師が奈良や鎌倉で活躍するようになり、京都の仏像制作は相対的に衰えたとされる。そのような中、本像は、慶派工房の作であることが明らかな同寺所蔵の六観音像と、同じ台座の形式で作風もよく似るため、ほぼ同時期に同一工房で造られたと推測される。
また、同寺近くの仏堂「北野経王堂」に六観音像とともに安置されていたことが明らかで、重要文化財だった六観音が2024年に国宝に昇格するのと同時に、未指定から国宝へ追加指定された。京都の鎌倉時代中期を代表する貴重な作品と評価されている。
しかし長らく未指定で本格的な修理を受けなかったため、表面には長年にわたるほこりの付着、彩色層の浮き上がり、虫食いなどの傷みが多数見つかっている。今後の活用のために早急な保存修理が求められる。25年度中の修理完了を予定している。
(2025年1月5日付 読売新聞朝刊より)
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