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2021.4.23

「天皇からの書状」含む重文「三千院円融蔵典籍文書類」 修理のため移送

運び出し前に「三千院円融蔵典籍文書類」を点検する関係者(京都市左京区の三千院で)=河村道浩撮影

文化庁、宮内庁、読売新聞社による「紡ぐプロジェクト」の2021年度の文化財修理助成事業がスタートした。今年度は新たに6件の国宝・重要文化財が助成対象となる。

このうち、重文「三千院円融蔵えんゆうぞう典籍文書類」が22日、所蔵する三千院(京都市)から京都国立博物館内の文化財保存修理所に移された。

同文書類は、僧侶らによる江戸時代の日記や法要の記録、歴代天皇からの書状などを含む膨大な文書類で、京都の歴史や門跡寺院としての歩みを伝える貴重な史料だ。今回はこのうち、領地に関する織田信長からの朱印状など約110点を修理する。虫食いのあるものや水にぬれて開けないものがあり、それぞれの紙の厚さや質感に応じた補修紙で破損した箇所を埋める。

この日、三千院では、修理技術者が蔵の引き出しに入った文書を1点ずつ確認し、梱包こんぽうして運び出した。三千院の穴穂あなほ行仁ぎょうにん執事長は「修理によって、書かれた内容が皆さんの目に触れ、新たな歴史が明らかになればうれしい」と期待した。

(読売新聞大阪本社文化部 藤本幸大)

(2021年4月23日読売新聞朝刊より掲載)

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