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2021.2.17

【大解剖!普賢菩薩像の修理】vol.5 映える白い肌、最高峰の作品―専門家に聞く

国宝 普賢菩薩像(12世紀・東京国立博物館蔵)

東京国立博物館所蔵の「普賢菩薩像ふげんぼさつぞう」(12世紀)は、戦後の文化財保護法で初めて国宝に指定された美術品の一つ。平安仏画の屈指の名品だ。

美術史が専門の有賀祥隆よしたか・東北大学名誉教授に、普賢菩薩像の魅力と修理の意義について聞いた。 

インタビューに答える有賀祥隆・東北大名誉教授

普賢菩薩像の修理事業が始まった当初から検討会に参加し、折に触れて関係者と議論を重ねてきた。

この作品には、法華経の信仰者を守護するために姿を現す、白い象に乗った普賢菩薩が描かれている。法華経を読む儀礼で掛けられたものらしい。

何と言っても、色と描写がすばらしい。通常、仏画の肉身の輪郭は朱線で描かれるが、この作品はごく細い墨線で的確に輪郭され、白い肌がより映える。「精妙」というほかない。

細く切った金箔を貼った精緻せいちな「截金きりかね文様」は、11世紀には単独で使われることが多かったが、12世紀には彩色と組み合わせた表現が流行した。象のくらに施された繊細な截金と、群青など、良質の顔料を駆使した彩色があいまって、奥深い表現が生み出されている。

「日本の仏画で素晴らしい作品を三つ選べ」と言われれば、その一つに必ず挙げる、最高峰の作品だ。修理を経て、後世にも現状のままのすばらしさを伝えていってほしい。

(2021年2月7日読売新聞より掲載)

~動画も公開中!~

2年にわたる普賢菩薩像の修理の流れをまとめた動画を制作しました。

伝統的な素材を用いた絵画の修理は「80年から100年ごとに行う」必要があり、作品の裏側まで見られる貴重な機会です。

今回は、以前の修理で補われた絹などを可能な限り取り除く作業が行われており、ルーペをのぞきながら、繊維を少しずつ除去する様子を初公開します。

■作品の魅力をTSUMUGU Galleryで!

高精細のデジタル鑑賞が楽しめる「TSUMUGU Gallery」では、普賢菩薩像の細部までクローズアップして見ることができます。詳しい作品解説とともにお楽しみください。

https://tsumugu.yomiuri.co.jp/gallery/

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