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2023.2.8

【修理リポート】「東妙寺文書」は太宰府で、「長命寺文書」は大津で作業を確認

東妙寺文書の現状などについて報告を受ける早田住職(左)
◇東妙寺文書◇

色味異なる過去の補修紙

 

紡ぐプロジェクトの助成事業で修理する重要文化財「東妙寺文書とうみょうじもんじょ」(佐賀県吉野ヶ里町・東妙寺蔵)の修理方針などを確認する協議が昨年、九州国立博物館(福岡県太宰府市)で行われた。

同文書は鎌倉時代の創建と伝わる東妙寺に伝来するもので、後醍醐天皇の綸旨りんじ、足利義満の御教書みぎょうしょなど中世文書を中心とする32通が3巻の巻物に仕立てられている。

東妙寺の早田空順住職(51)、修理を担う「修理工房 宰匠ざいしょう」(福岡県筑紫野市)や文化庁の担当者らが出席し、汚れや虫食い、折れなどの損傷状況を確認した。また、過去の修理で用いた補修紙が本来の色味と異なり、鑑賞の妨げになっていることなどが報告された。

修理は同博物館内で行われ、巻物を解体し、裏打ち紙や補修紙を外して汚れを除去、虫食い穴を同じ色合いの補修紙で補充して2024年度末までに仕立て直す。22年度は全体の2割まで終わらせる予定という。

早田住職は「修理の現場を拝見し、状況を把握できてよかった。安心してお任せしたい」と話した。

◇     ◇     ◇

 
修理状況を確認した重要文化財「長命寺文書」
◇長命寺文書◇

負荷少ない折り方、回数検討

 

紡ぐプロジェクトの2022年度の修理助成対象となった重要文化財「長命寺ちょうめいじ文書」(滋賀県近江八幡市・長命寺蔵)について、現状の確認や作業方針を話し合う会議が、大津市の坂田墨珠堂で開かれた。

平安~明治時代の古文書群(全4567通)で、このうち「穀屋こくや文書」51通と、江戸時代に描かれた「長命寺参詣曼荼羅まんだら」3点を3年かけて修理する。

参詣曼荼羅は、長命寺の伽藍がらんや門前町の繁栄ぶりが紙に華麗に描かれている。寄付や参詣を呼びかけるため尼僧が折り畳んで携え各地を巡り、人々に見せて寺や仏の霊験を説いた。

折り目を中心に紙の亀裂や絵の具の剥落はくらくが目立ち、穴が開いた部分もある。会議では、武内健斗副住職(34)や文化庁の担当者らが、劣化した部分を観察しながら修理技術者の説明を受けた。

紙を折ると摩耗や亀裂の原因になる。劣化を防ぐには折らずに保存すればよいが、参詣曼荼羅は持ち運ぶために折り畳まれ、現代まで伝えられた歴史的な経緯がある。

このため、負荷の少ない折り方や回数を検討し、補強のための裏打ち紙の厚みを調整するなど、折り畳んでも文化財の価値を損なわずに修理する方針を確認した。武内副住職は「難しい修理だが、知恵や技術を駆使して挑戦してくださり、ありがたい。3年後が楽しみ」と話した。

 

紡ぐプロジェクトとは

国宝や重要文化財、皇室ゆかりの名品、伝統文化、技術などを保存、継承していく官民連携の取り組み。文化庁、宮内庁、読売新聞社が2018年に開始した。展覧会の収益の一部や、企業からの協賛金などを活用し、文化財の修理を助成し永続的な「保存・修理・公開」のサイクル構築を目指す。これらの文化財の魅力や修理作業の経過に加えて、次世代に伝える伝統芸能、工芸の技術などを、紙面やサイトを通じて国内外へ情報発信している。

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