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2026.2.9

【三重塔 住民の宝2】極彩色の仏画 鮮やか(滋賀・西明寺)、国内唯一 八角形の屋根(長野・安楽寺)

国宝・西明寺三重塔の初重内部には、大日如来坐像が安置され、柱や壁には建立当時の仏画や文様が描かれている(滋賀県甲良町で)=大塚直樹撮影

三重塔は三重の屋根を持つ、細長く、高く組み立てられた仏教建築である。その美しい姿が今日まで伝わったのは、先人たちが屋根のき替えや解体修理を繰り返してきたおかげだ。本瓦葺き屋根の全面葺き替え工事を完了したばかりの愛媛・石手寺いしてじ三重塔をはじめ、国内で唯一という八角形の屋根を持つ長野・安楽寺、内部の極彩色の仏画や文様が鮮やかに残る滋賀・西明寺など、地域の宝になっている特色のある三重塔を選んで紹介する。

極彩色の仏画 鮮やか

滋賀・西明寺
二重、三重の丈が低く、安定感に富む西明寺三重塔

本堂(国宝)の南西、一段高くなっている場所に立つ。檜皮葺ひわだぶき屋根で、鎌倉時代後期の建立とされ、伝統的な様式である「和様」で造られている。

心柱を初重の屋根の上で止め、初重内部は仏の空間となっている。中央に大日如来坐像ざぞうを安置し、四天柱や四方の壁、扉には建立当時に描かれた極彩色の仏画や文様が鮮やかに残る。初重内部に極彩色を施した塔は多いが、中世以前の塔では剥落はくらくが激しく、図柄が定かでないものがほとんど。それだけにこの塔の壁画はきわめて貴重なものだ。

中野英勝住職(68)は「壁画は国宝の建物とは別に、重要文化財に指定されている。後世に伝えるため現在は1年を通じ非公開としている」と話す。

直近では2011年度に屋根の葺き替え工事を実施した。

国内唯一 八角形の屋根

長野・安楽寺
国宝の安楽寺三重塔。国内に現存する唯一の八角三重塔

日本に現存する唯一の木造八角三重塔。四重塔のように見えるが、一番下の屋根は初重の周りにつけた「裳階もこし」と呼ばれる飾り屋根だ。

若林宜範住職(42)は「観光地の別所温泉のお寺とあって、年間5万~6万人が塔の拝観に訪れる。地域住民にとっても塔は地域のシンボルのような存在」と話す。

塔は鎌倉時代に中国から禅宗に伴って伝来した「禅宗様」で造られている。各重の組物(屋根の重量を受けて下の柱に伝える構造材)が、伝統的な「和様」の組物に比べ、ずっと複雑で密になっているのが特徴だ。一見して軒下がにぎやかな印象を受ける。

屋根はサワラ材の薄板(杮板こけらいた)を竹くぎで留めていく伝統的な杮葺こけらぶき。自然素材でできた屋根の曲線は周囲の自然ともよくなじんで見える。

建立年代は鎌倉末期から室町初期までの間とされてきたが、2004年、安楽寺の依頼を受けた研究機関の調査の結果、塔の用材の伐採年代が1289年(正応2年)と判明。これにより遅くとも1290年代(鎌倉末期)には建立されたことが明らかとなった。

初重の内部は土間で、心柱は二重目から立ち上がる。初重に心柱がないため、広い仏の空間を設けることができ、八角形の壇上に大日如来坐像を安置する。天井は平らな板を並べて張った「鏡天井かがみてんじょう」と呼ばれるもの。こちらも禅宗様の特徴だ。

「私が安楽寺に入った2011年に、三重塔の保存修理工事が行われた。相輪の修理は85年ぶり、屋根の全面葺き替えは58年ぶりだった」と若林住職。

先代から住職を引き継いだのは25年4月。杮葺き屋根の葺き替え工事から15年近くが経過し、自身が次の工事を執り行う中心的な役割を担うことも十分に考えられる。

「歴代住職が連綿と守り続けてきたように、今度は自分が檀信徒だんしんとさんや地域の皆さんと力を合わせ、塔を未来へ伝える準備を着実に進めていきたい」と力を込めた。

安楽寺三重塔初重内部。八角形の壇上には大日如来坐像が安置されている

(2026年2月1日付 読売新聞朝刊より)

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