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2021.11.12

【21年度新指定品から③】保護の在り方、時代に合わせ変化~奥健夫・文化財調査官に聞く

国宝・重要文化財はどのように指定され、守られているのか。文化庁の奥健夫・主任文化財調査官に聞いた。

文化庁の奥健夫・主任文化財調査官

――現在の国宝・重文の考え方ができた経緯は。

1897年制定の古社寺保存法、1929年の国宝保存法を経て、貴重な文化財が「国宝」として守られることになりました。50年に制定された文化財保護法では、戦前の国宝が「重要文化財」と名称を改められ、その中でも世界文化の見地から重要なものが「国宝」とされました。

――国宝・重文に指定する基準は。

美術史的に見て制作の背景や時期などに関する定説がはっきりとしており、普遍的な価値が証明できることが重要です。重視されていなかった作品が、新たな研究や解釈によって価値が高まり、重要文化財の指定に至るケースもあります。

重要文化財の中で、国宝に指定されるものは、残存状況の良さも大事な条件となります。有名な作品であっても一部しか残っておらず、国宝に指定されていないものも多くあります。

――国宝・重文に指定されるとどうなるか。

国宝・重文の修理を行う際は事前に文化庁に届け出て、専門の知識を持った技術者に任せる必要があります。修理の際は、費用が国から補助されます。補助率は原則半額、修理規模などに応じて最大85%になります。

修理は原則、所有者が行うものですが、修理を行うタイミングを決めるには適切な助言が必要となり、国と所有者の間を結ぶ自治体の役割も大事となります。

国産気動車の標準となった「キハ四二〇五五号気動車」
1937年(昭和12年) 日本車輌製造製 【所有者】九州旅客鉄道

――今後の国宝・重文指定に求められることは。

今回の答申でも乗り合いバスや旅客列車が重文に選ばれたように、近年、近代の文化財の保護が重視されています。文化財保護の在り方は時代に合わせて変わっています。

一方で過疎化などで保護体制が十分に整っていない所もあります。保護の対象を広げつつ、これまで守ってきたものを引き続き保護する体制を維持することが重要だと思います。

(2021年11月7日読売新聞から)

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