文化審議会は10月15日、新たに7件の美術工芸品を重要文化財にするよう、文部科学相に答申した。指定されれば国宝を含む重要文化財(美術工芸品)は1万820件になる。
由緒のある彫刻や古文書などに加え、列車やバス車両といった近代以降の交通・産業発展に貢献した資料も選ばれるなど、多様な価値を有する今回の新指定品を紹介する。
奈良仏師・
鎌倉時代の弥勒信仰を表現した造形は、同時代末期の記念碑的大作とされる。西大寺の佐伯俊源執事(55)は「叡尊さんには弥勒への信仰が色濃くあったことから、弟子たちも弥勒仏を選んで造ったのだろう。重文指定は素晴らしいこと。宗教者として貴重な文化財を伝えていきたい」と話している。
本堂の
近江を訪れた聖徳太子が巨大な霊木の下半分に観音を彫ったとの寺伝から、「植木観音」とも称される。織田信長による焼き打ち(1573年)では建物の多くが焼失したが、僧侶が像を台座から切り離し、戦火から守ったという。
聖徳太子の没後1400年にあたる来年は、10月1~16日に特別参拝が計画されている。濱中亮明住職(77)は「太子ゆかりの像が注目されてうれしい。太子と近江の関係を多くの人に知ってほしい」と期待している。
四国八十八か所五十一番札所・石手寺の二王門(高さ約11メートル)で、2体が参拝客ににらみを利かせる。ともに厚いヒノキ材が使われており、1240年(仁治元年)の作とされる。作風は写実的で力強く、運慶派の特徴がみられる。保存状態も良好だ。
同寺には国宝・二王門のほかに本堂、三重塔、鐘楼など7件の重要文化財があり、2009年には「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で星一つを獲得した。松山市の道後温泉からも近く、普段は湯治客や観光客でにぎわっている。
加藤俊容住職(58)は「コロナ禍で暗いニュースが多い中での吉報。しっかりと守り、後世に引き継いでいきたい」と喜んでいる。
(2021年11月7日読売新聞から)
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