池本一三
〈湖のほとりで〉
(部分)
高さ50センチの器いっぱいに広がる風景。初めてだったとしても、どこか懐かしいような、そんな場所にポケモンたちが登場しました。豊かな自然とポケモンたちの姿かたちを繊細に表した色調は、本作の大きな魅力となっています。
その色ですが、実はたった8色なのだと聞いてびっくり。驚きの製法は以下のとおり――。①ガラスのボディーに、エナメルという金属化合物をアルコールに溶かし、1色ずつ霧吹きで吹き付ける②アルコールが蒸発し、粉に戻ったエナメルの不要な部分を筆の穂先で取り除き、次の色を吹く③電気炉で焼き付ける……。これを繰り返します。無数の小さな色の点と点が並び、その状態を私たちは多彩色であると感じているのです。これぞまさしく「かがくのちから」! それを理屈より先に直感で届けるのもまた工芸の特徴でもあります。
今回、描かれたのはポケモン世界の旅の記憶。ガラスのボディーを透過した柔らかな光が浮かび上がらせた情景を訪ねながら、その味わい、深い趣をお楽しみください。
(国立工芸館主任研究員 今井陽子)
◇ ◇ ◇
桂盛仁
〈
〈ブローチブラッキー「眠り」〉
作者の桂盛仁は、装身具の制作を得意とする「彫金」の人間国宝。普段は身近な動植物や昆虫などをモチーフにして作品をつくり出しています。
「子どもたちや若い世代に、もっと工芸に親しんでもらうきっかけになればいい」。この
銅に5%の純金を混ぜた「
丸みのある愛らしいフォルムは赤銅を打ち出して形づくられています。そこに穴を彫って金を
もう一度、ブラッキーを見てみましょう。それぞれの金属の美しい色合いと技法がポケモンと相まって、しぐさや表情、質感までも伝えています。身に着けてみたいと思わせる究極の装身具。まさにブラッキーが進化したかのようです。
(国立工芸館長 唐澤昌宏)
「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」(読売新聞北陸支社など主催)は6月11日まで国立工芸館(金沢市)で開催中。問い合わせはハローダイヤル 050・5541・8600。
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