2023年12月、東京都足立区にある劇場「シアター1010(せんじゅ)」で、文楽を上演した。国立劇場以外で文楽を上演するのは、閉場後初めて。あす〔2024年2月〕5日からは、日本青年館ホール(東京都新宿区)での公演が始まる。
国立劇場小劇場は、文楽に必要な舞台機構をすべて備えていたため、新たに文楽用の舞台を創り上げるのに様々な工夫が必要になる。
代表的なものでは「
床は、舞台に向かって右側の前方から客席まで張り出した場所で、太夫と三味線が義太夫節を演奏する。円い形の盆を、直径のライン上に
盆の代わりとして、地方の巡業などで使用している
もう一つの舞台機構「船底」は、人形遣いが人形を遣う、舞台の一段低くなっている部分だ。国立劇場小劇場は、もともと船底が掘りこんであり、普段は木の台で埋めていた。文楽公演のときには、台を取り外すだけで船底が完成したが、今回は逆に、通常の舞台面を船底にして、周りに平らな木の台を敷きつめて高くすることで船底を作った。見る人の目線に人形の高さを合わせ、見やすくするための調整も重ねた。
舞台の構成要素には全て役割があり、複数の要素が融合して舞台は完成する。これからも長年国立劇場で培った経験と知識による工夫を凝らし、新たな舞台を創り上げていく。(国立劇場制作部)
設備の老朽化にともなう建て替えのため、2023年10月でいったん閉場した国立劇場(東京・半蔵門)。その後も、伝統芸能の技を守り継ぐための取り組みを続けています。新たな工夫や挑戦などについて、随時お届けします。
(2024年2月4日付 読売新聞朝刊より)
0%