平安時代に平泉で栄華を極めた奥州藤原氏の三代秀衡の名を冠する。秀衡が特産の漆と金を使い京から招いた職人に作らせた仏像・仏具が起源との説もあるが定かではない。1985年に伝統的工芸品に指定され、岩手県を代表する漆器の一つとなっている。
一関市など県南部と宮城県北部の寺社や旧家には「古秀衡椀」と呼ばれる古いおわんが伝わる。目を引くのは、高台が高く胴が膨らんだ重厚感のある形。外側に朱漆で雲や草花を描き、ひし形の
古秀衡椀は一度は途絶えたが、中尊寺から約20キロ離れた奥州市衣川増沢地区で増沢塗を生産していた職人らが技術を復活させ、35年前後から「秀衡塗」として売り出すようになったという。
同地で創業した
華やかな秀衡塗は、自宅で冠婚葬祭が行われることの多かった戦後や、引き出物として重用されたバブル経済期には需要が多かった。だが徐々に売れ行きは伸び悩むように。岩手県によると、秀衡塗の出荷額は近年は年間6000万円前後にとどまっている。
時代の変化に伴い、日常生活に寄り添う商品の開発も進む。秀衡塗工房の丸三漆器(一関市)の新ブランド「FUDAN」は、
(文化部 竹内和佳子)
(2023年10月25日付 読売新聞朝刊より)
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