幾本もの竹ひごが、繊細な手つきで編み込まれていく。わずか0.5ミリの薄さにまで加工された竹ひごは柔らかくしなり、美しい編み目を持つ花かごができあがった。
湯けむり漂う大分県別府市にある竹細工の工房「
用いるのは、丈夫で弾力性に富む特産の真竹だ。竹割包丁で半分、また半分と繰り返し割いていく。竹の内側を剥ぐと、一本いっぽんが均一な幅と厚さにそろうよう、「
別府で竹細工が発展したのは江戸時代。日本有数の温泉地として全国各地から湯治客が訪れるようになり、米とぎ用のざるといった生活用品の生産販売が盛んになった。明治から昭和にかけ、職人の育成機関も誕生し、地場産業として定着すると、1979年には国の「伝統的工芸品」に指定された。市内にある県立竹工芸訓練センターでは、毎年10人前後の担い手を輩出している。
元々北海道で造園業に従事していた大谷さんも、このセンターで学んだ一人だ。2005年に独立し、現在は若手2人と作業を共にする。安価なプラスチック製品の普及や生活スタイルの変化で、竹製の買い物かごや台所用品などの需要が減少するなか、大谷さんが抱くのは「現代人の生活に溶け込むような新しい竹細工製品を国内外に発信したい」との思いだ。
10年ほど前から東京のアートコンサルタント会社と共同で、アクセサリーをはじめ、デザイン性の高い花器、パーティー用のバッグなどを作り、都内のインテリアショップで販売している。海外で竹が環境にやさしい素材として注目されていることを受け、ニューヨークのギャラリーでも取り扱ってもらっているという。
「堅さやしなり具合など竹には一つとして同じものがない。自然素材ならではの生きたぬくもりを感じてもらえたら」
(西部文化部 井上裕介、写真も)
(2023年4月26日付 読売新聞朝刊より)
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