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2023.2.10

【工芸品  次世代の作り手②】陶芸・桝本佳子さん(滋賀県甲賀市)

やきものの里・信楽を拠点に新しい表現に挑む桝本さん(滋賀県甲賀市で)

工芸の分野は、国が重要無形文化財に指定する伝統の技法で制作するものから日本各地で継承されてきた実用品まで幅広い。日本の工芸は、作り手の後継者不足、生活スタイルの変化による需要減などの課題を抱えながら、新しい形や使い方で海外でも高い評価を得ている。伝統的な技法、素材を用いて、現代アートの作品を手がける作家の活躍もめざましい。ここに紹介する4人の作品を見ると、独創性に驚かされるに違いない。春には4人が出品する工芸の展覧会が開催される。未来を目指す工芸に、新しい日本の美を感じてみたい。

◇陶芸◇
桝本佳子けいこさん 40(滋賀県甲賀市)

ユーモア「盛りつけた」器

桝本佳子作 「蒲公英/皿」

制作テーマは「用途のない、飾られるためだけに作られた器」という。描かれた草花が生えた皿、反物から引き出された生地がゆらゆらと貫通するつぼ、カニがにょっきりと外にはい出してきたような壺などは、どれも古典的な壺や皿の姿をしているが、花を生けたり、食べ物を盛りつけたりすることはない。

桝本佳子作 「反物/壷」(2022年)
千總蔵、撮影:来田猛

子ども時代から茶道を習い、「器」と出会った。「先生が自作の香合などを使われることがあり」、自分でも作ってみたいと憧れた。美術大学に進学してからは陶芸一筋だ。

現在はやきものの里である滋賀・信楽を拠点としている。陶芸の技法で作品を作っているが、「工芸というにはもっとレベルアップが必要」と感じている。

伝統的な信楽の作品を見ると「細部まで神経が行き届いていて、思いの強さが伝わってくる」。それに刺激を受け、内側の土を削って厚みを整える作業では、「もう少し」と入念に手を動かしていた。

内側の土を削り出して厚みを整える

百貨店の食器売り場や、明治期の工芸作品を眺めるうち着想を得ることもあるという。「私の作品はモチーフによって色付けなど使いたい技法も異なるので、それぞれ伝統の技の継承を目指す人たちに学び、一緒に作り上げていくのもいい。身近な陶磁器という素材とユーモアのあるかたちで、美術ファンだけでなく、たくさんの人に親しんでもらいたい」と願う。

1982年、兵庫県生まれ。京都市立芸術大学大学院修了。英国などでも制作。夫は日本工芸会正会員の陶芸家・神崎秀策さん(39)。

(2023年2月5日付 読売新聞朝刊より)

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