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「京都五山送り火」で、夜空に浮かび上がった如意ヶ嶽(大文字山)と他の山の送り火を見る人たち(2024年8月16日、京都市内で)

2024.9.11

【火祭り2 京都・京都五山送り火】盆の終わり 祖先を浄土へ

松明たいまつに赤々と燃え盛る炎が長い帯になる吉田の火祭り(山梨)、市街地を取り巻く山々に文字や形が浮かび上がる京都五山送り火、傘から舞い落ちる華麗な火の粉が印象的なからかさ万灯まんとう(茨城)――。一口に「火祭り」と言っても由緒も形態も様々だ。地元住民はもちろん、観光客にとっても心躍る季節の風物詩となっている。一方、各地で担い手不足が深刻に。祭りの材料確保など継承に向けた課題も多い。石川県の能登半島各地に伝わるキリコ祭りは、元日の地震により大きな影響を受けた。

夜空にくっきりと浮かび上がる「京都五山送り火」は、祇園祭とともに京都の夏に欠かせない伝統行事だ。

毎年8月16日、左京区如意ヶ嶽の「大文字送り火」、同区松ケ崎にある西山と東山の「松ケ崎妙法送り火」、北区西賀茂にある妙見山の「船形万燈籠(とうろう)送り火」、同区大北山にある大文字山の「左大文字送り火」、右京区嵯峨鳥居本にある仙翁寺山の「鳥居形松明送り火」の順に、京都盆地の周りを東から北、西へと反時計回りに点火される。1983年には、それぞれ京都市無形民俗文化財に登録された。

送り火は盆を締めくくる伝統行事。迎え火によって現世に迎えた祖先の霊を再び浄土(死後の世界)に送るもの。送り火が一般に広く行われるようになったのは仏教が庶民の間に浸透した中世以降とみられている。

京都五山送り火連合会(事務局・京都市文化財保護課)によると、五つの送り火にはそれぞれ違った由緒が伝承されている。起源とされる時期も平安時代初期、鎌倉時代末期、室町時代中期、江戸時代初期など様々だが、その記録はほとんどなく、全て後世の人々による推測という。

この〔2024年〕夏も当日の午後8時、最初に「大」の字が浮かび上がると、5分おきに次々に火がともされた。各山とも点灯時間は30分。今年は市観光協会が外国人観光客ら向けに夕食付きの特別体験ツアー(1人23万円)を初めて販売した。その収益は送り火の保存や継承に活用される。

(2024年9月7日付 読売新聞朝刊より)

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