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2024.6.7

【複製品の進化5】手に取る仏像フィギュア 大阪・海洋堂制作

鑑賞、盗難対策、共生社会づくり――。複製の目的は多岐にわたっている。時には複製品が修復の手助けとなることもあり、文化財保護の観点で重要な役割を果たしている。文化芸術に親しむ上でも、鑑賞者と作品との距離を縮めてくれ、その技術の高さを改めて知る機会にもなる。複製という行為の背景には、本物に対する大きな敬意や関心があると言えるだろう。

恐竜や動物、アニメの人気キャラクターなどのフィギュアを企画、制作、販売する海洋堂(大阪府門真市)は、国宝の仏像などのフィギュアも数多く手がけている。

「仏像のフィギュアを間近に眺めるのは楽しい」と語る海洋堂の宮脇修一取締役専務

2009年、興福寺の阿修羅像(国宝)のフィギュアを手始めに、これまでに100体以上を制作。東大寺の誕生釈迦仏立像、法隆寺の百済観音像、東寺の帝釈天騎象像などの国宝や、六波羅蜜寺の空也上人立像(重要文化財)など、展覧会の主催者からの依頼で公式グッズとして制作した著名な作品も多い。

海洋堂が制作した帝釈天騎象像

素材は主に樹脂。同社の造型師が作った原型をもとに、工場で商品を量産する。彩色は一つの作品を1人が塗って仕上げるのではなく、例えば、10か所塗る作品の場合、10人がライン状に並び、各人が1か所のみを塗るという。

価格は数百円のカプセルトイから、1万円前後の公式グッズまで。宮脇修一取締役専務(66)は「精巧なフィギュアを手に取ってもらうことで、誰でも仏像に親しめる。仏像の造形がわかり文化財への関心も高まる。志を持った製品なのです」と力を込めた。

(2024年6月2日付 読売新聞朝刊より)

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