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2024.8.19

【皇室の美】雍仁親王 海外の美術品に関心

展覧会「いきもの賞玩」(皇居三の丸尚蔵館)

「コリントス式アンフォリスコス」 紀元前7~6世紀頃 ギリシャ製

皇居三の丸尚蔵館の収蔵品は日本美術に限られず、皇室が世界の国々と交流する中で親善の形として贈られたり、展覧会などで買い上げられたりした海外の美術品も含まれ、それが特徴の一つといえる。

今回紹介する「コリントス式アンフォリスコス」は、紀元前7~6世紀頃にギリシャの都市コリントスで、オリエントの影響を受けて製作されたもので、アンフォラ形の素焼きの小型容器に黒や赤紫の彩色と刻線で動物などが描かれている。

アンフォラは口の両側に持ち手のある容器を指し、主に地中海世界でワインやオリーブオイルなどを運搬・保管するのに使用された。その小型である「アンフォリスコス」は香油入れとして使用されたと考えられている。帯状に配置された「いきもの」の図様には首を曲げた鳥のほか、草をはむ野山羊のやぎや獅子が見られ、花の形をしたロゼット文や脚部の光条文も描かれている。

本作品は大正天皇第2皇男子の秩父宮ちちぶのみや雍仁親王やすひとしんのうが1929年に日仏芸術社より買い上げられたものと推測され、同時期に買い上げられたペルシャ陶器などと併せて、秩父宮家御遺贈品として当館に収蔵されている。

雍仁親王は、いずれも日仏芸術社が運営し、東京で開かれた28年の「第7回フランス美術展覧会」、29年の「第8回フランス美術展覧会」、30年の「ペルシア展」などをご覧になった。晩年は御殿場御別邸(現・秩父宮記念公園)の敷地に三峰窯みつみねがまを築いて自分で作陶されるほど陶芸に深くかかわられた。本作品も、そのような関心の高さ故の買い上げと考えられる。皇族の方々の美術への関心によって皇室にもたらされた海外の美術品も「皇室の美」の一例といえるだろう。

(皇居三の丸尚蔵館研究員 三島大暉)

◆ 展覧会「いきもの賞玩しょうがん

 【会期】〔2024年〕9月1日(日)まで。月曜休館
 【会場】皇居三の丸尚蔵館(皇居東御苑内)
 【問い合わせ】050・5541・8600(ハローダイヤル)

(2024年8月17日付 読売新聞朝刊より)

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