京都市で開かれていた「第25回国際博物館会議(ICOM)京都大会」は9月7日、世界の博物館が「カルチュラル・ハブ(文化の結節点)」として、時代や国、学問分野を超えた交流の中心的役割を果たしていくことなどをうたった決議文を採択し、閉幕した。
決議文では、ほかに▽ICOMとアジアの博物館との連携▽持続可能な未来に向けた取り組みの強化▽収蔵品の安全な管理――を目指すことなどが盛り込まれた。
大会では、世界で相次ぐ災害を受け、専門分野別に設けている国際委員会の一つとして、災害時の対応を研究する委員会の新設が決まった。ICOMの規約に含まれる博物館の定義についても、博物館が社会問題に対して積極的に関与することを盛り込むべきだとして改正が検討されたが、議論が不十分だとして、結論は今後に持ち越された。
大会組織委員長を務めた佐々木丞平・京都国立博物館長は、会議終了後の記者会見で「大会の理念を浸透でき、未来へつながる議論ができた。予想を上回る成功だった」と語った。
7日夜、京都国立博物館(京都市東山区)で行われた閉会式で、京都府・市の西脇隆俊知事、門川大作市長は、次回(2022年)の開催地となるチェコの代表に西陣織で新調したICOMの旗を手渡した。会場では日本舞踊も披露され、閉幕に彩りを添えた。
国内初開催となった今大会には、120の国・地域から過去最多となる4590人が参加した。
閉会式が開かれた京都国立博物館では、海外から訪れた大会参加者に着物を通して日本文化への理解を深めてもらおうと、全日本きものコンサルタント協会(東京都)が着物の着付けをするサービスを行い、約70人が和装を楽しんだ。
参加者らは花柄の着物などを身にまとい、閉会式の会場へ。記念撮影を楽しむ姿も見られた。着付けを主催した同協会の浮里直也さん(61)は「世界の博物館関係者に着物の魅力を知ってもらえれば」と話し、シンガポールから参加したアスマ・アリアスさん(40)は「伝統的な日本の着物は美しく、とても気に入っています」と感激した様子だった。
(2019年9月8日読売新聞朝刊より掲載)
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