髙島屋の和菓子バイヤー・畑主税さんが、毎月の行事や旬の素材にちなんだ、とっておきの和菓子を紹介します。12月は、いまや初春にいただく定番和菓子となった「花びら餅」を取り上げます。白にうっすらとピンク色が透けて見える、なんとも愛らしい色合いの餅菓子。お正月に食べるようになった由来とは――?
京都の和菓子店「
この中の鮎が江戸時代にはゴボウに代わり、宮中正月宴で恩賜された公家らが「宮中雑煮」と呼び習わしていたとか。同店によると、これが原形となり、やがて全国で正月菓子として定着するようになりました。
川端道喜では、明治の頃から、裏千家の初釜用に「
そして毎年、初釜用の「御菱葩」の準備のために試作される「
【御菱葩】1個 税込1500円
川端道喜/京都府京都市左京区下鴨南野々神町2-12
TEL:075-781-8117
※試餅は毎年12月1日から電話で予約受け付け。2021年の予約は終了しています。
とらやの花びら餅は、丸く伸ばした白い餅生地に、蜜煮した柔らかいゴボウと白味噌あんを挟んで二つ折りにしたもの。中の菱餅が濃い色合いなのが特徴で、これは小豆の煮汁で染められており、着色料は使用していないそうです。
ちなみに、とらやの花びら餅は東西で生地が異なり、東京ではコシのある餅生地で、京都では柔らかい
【花びら餅】1個 税込648円
とらや赤坂店/東京都港区赤坂4-9-22
TEL:03-3408-2331
https://www.toraya-group.co.jp/
こちら京都・
もともと宮中では、鮎2匹が餅に添えられていたそうで、ゴボウはその代用。お店によって、ゴボウが2本だったり、ゴボウ1本と京人参1本だったりと、さまざまにアレンジされているところも、花びら餅の面白いところです。
【花びら餅】1個 税込562円
塩芳軒/京都府京都市上京区黒門通中立売上ル飛弾殿町180
TEL:075-441-0803
https://www.kyogashi.com/
お店によって千差万別の花びら餅ですが、東京・青山の菊家のものは、外側の白い求肥餅も、内側の薄紅色の餅も、どちらも菱形。それを半分に折りたたんで挟んでいます。ダブル菱餅の花びら餅――まるで紅白の衣を身につけているようで、とても華やかな印象を受けます。
やや細めの蜜煮したゴボウには、しっかりと食感が残っています。そして、あんにも一工夫されていて、口に運ぶと、まろやかな甘みだけではなく、独特の爽やかな香りと辛味を感じます。実は山椒を細かく刻んで、白味噌あんの中に練り込んでいるのです。
シンプルなあんではなく、少しアレンジを加えて遊び心を見せる。一般的な花びら餅とは違うかもしれませんが、こういうアレンジもまた楽しみたいですね。
【花びら餅】1個 税込600円
菊家/東京都港区南青山5-13-2 ※2021年から菊家ビル9階の新店舗で営業します。
TEL:03-3400-3856
http://home.h00.itscom.net/kikuya/index.html
徳島・茜庵の花びら餅は、白味噌あんが薄紅色に染められており、羽二重餅を通してほのかに淡いピンク色が透けて見えます。上生菓子なども、多くは白いあんで包んで鮮やかな色をぼかしていることがあります。表面を見ただけでは、はっきりとは分からない色使いへの工夫が施されているのですね。
そして、蜜煮したゴボウ1本ではなく、赤色が映える金時人参も挟まれています。すべすべとした餅生地に、違う食感のゴボウと人参、そして、白味噌あんのまろやかさ。ゴボウと人参はちょうど紅白に見えて、とてもめでたく、晴れやかな気持ちになることでしょう。
【花びら餅】5個入 税込1836円
茜庵/徳島県徳島市徳島町3-44
TEL:088-625-8866
https://www.akanean-shop.com/
プロフィール
髙島屋和菓子バイヤー
畑主税
1980年生まれ、大阪府出身。2003年に髙島屋に入社し、洋菓子売り場の担当を経て、06年和菓子売り場の担当に。京都の和菓子を作りたてのままで提供したいという思いから、人気店の上生菓子を自ら京都で仕入れ、新幹線で運び、夕方に店頭に並べ話題を集めた。全国1000軒以上を巡り、食べた和菓子は1万種以上。著書に「ニッポン全国 和菓子の食べある記」(誠文堂新光社)。ブログ「和菓子魂!」(http://blog.livedoor.jp/wagashibuyer/) Twitter:@wagashibuyer
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