日本美を守り伝える「紡ぐプロジェクト」公式サイト

2026.2.4

【皇室の美】「赤絵金彩鴛鴦おしどり白頭鳥図花瓶」— 赤絵細描あかえさいびょうの正統伝える

令和6年能登半島地震・令和6年奥能登豪雨 復興支援特別展「ひと、能登、アート。」

赤絵金彩鴛鴦白頭鳥図花瓶 一対 製作・九谷陶器会社、絵付け・竹内吟秋皇居三の丸尚蔵館収蔵

「ジャパン・クタニ」と呼ばれて海外への輸出が盛んであった明治時代に製作された、九谷焼くたにやき赤絵金襴手あかえきんらんでの花瓶。花瓶胴部の表裏には、花を咲かせた梅の枝とその下を流れる川面に2種類の鳥が描かれています。どちらもつがいで、片側には互いに見つめあう仲むつまじい夫婦を連想させる鴛鴦おしどり。その裏面には、頭が白いため「白頭鳥」と書くシロガシラ(ヒヨドリの仲間)が体を寄り添わせた姿で描かれ、共に白髪になるまで添い遂げる夫婦円満への願いを表します。また、冬の寒さを乗り越えて開花する梅は、強い生命力や多くの実をつけることから子孫繁栄を象徴します。花瓶に描かれたのは吉祥をつかさどるイメージです。

花瓶裏面の頸部に描かれた鳳凰

一方、花瓶頸部けいぶには細い線描で鳳凰ほうおうと竜が描かれています。この細い線描表現は九谷焼の絵付け技法で「赤絵細描あかえさいびょう」と呼ばれます。江戸時代の19世紀前半に宮本屋窯みやもとやがまの画工であった飯田屋八郎右衛門が、この細密な赤絵の絵付けの技法を完成させました。しかし、1859年(安政6年)の宮本屋窯の廃窯はいようとともに、赤絵細描は一度途絶えます。本作品では白地の背景に流麗な筆致で大きく描かれた鳥たちに目を奪われますが、鳳凰と竜の絵付けでは赤絵細描の高度なテクニックが再現されています。明治時代にこの赤絵細描を復活させたのは一体誰なのでしょうか。

花瓶の底裏には「九谷陶器会社製 吟秋画」と赤の上絵付けで書かれています。九谷陶器会社が製作した花瓶に、竹内吟秋たけうちぎんしゅう(1831~1913年)が絵付けをほどこしたことを示す銘です。九谷陶器会社は在銘作品が少なく、1879年(明治12年)の設立から91年(同24年)の解散まで約10年間の稼働期間があったものの、実際にどのような作品が製作されていたのかつまびらかではありませんでした。絵付けを担当した吟秋は、宮本屋窯の飯田屋八郎右衛門から陶画を学び、1880年(同13年)に同社の支配人兼陶工部長になった人物で、同社解散後も博覧会で高い評価を得て、優れた画工を輩出しました。

赤絵細描の正統を伝えたこの逸品は、能登半島地震、奥能登豪雨からの復興を応援するため、このたび石川に里帰りすることになりました。(皇居三の丸尚蔵館主任研究員 岡本隆志)

「ひと、能登、アート。」
 【会期】〔2026年〕3月1日(日)まで
  ※月曜休館(2月23日は開館し24日休館)
 【会場】国立工芸館(金沢市出羽町)
 【観覧料】一般1200円など
 【問い合わせ】(電)050・5541・8600(ハローダイヤル)
 ※「赤絵金彩鴛鴦白頭鳥図花瓶」は本展で通期展示されています。

(2026年2月1日付 読売新聞朝刊より)

Share

0%

関連記事