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2025.1.6

孝・玉コンビ半世紀「運命」 

大阪松竹座 19年ぶり共演へ

来月〔2025年1月〕3日に始まる大阪松竹座の初芝居に、女形の最高峰で、人間国宝の坂東玉三郎が出演する。前半の「お年玉公演」(8日まで)では、上方ゆかりの地唄舞などを披露。11日からの「初春特別公演」では、「於染久松色読販おそめひさまつうきなのよみうり」「神田祭」で、人間国宝の片岡仁左衛門と共演する。仁左衛門が孝夫を名乗っていた1970年代から続く「孝・玉」の名コンビが、大阪松竹座で共演するのは19年ぶり。玉三郎が「運命」と語るコンビの軌跡をたどる。(編集委員 坂成美保)

「於染久松色読販」で夫婦役

歌舞伎には立役たちやくと女形の名コンビが欠かせない。玉三郎は「つくろうと思ってできるものではない。その時代に偶然に生まれてくるもの」と捉える。

玉三郎が「お正月のんびりして、七草(がゆ)明けてから大阪に来たら」と仁左衛門に声をかけ、仁左衛門の「あーいこか」のひと言で共演が決まったという=宇那木賢一撮影

鶴屋南北作「於染久松色読販」は、「孝・玉」の出発点となった作品で、初役で演じたのは1971年。東京・新橋演舞場で始まった「花形歌舞伎」の初回公演だった。

玉三郎演じる悪女「土手のお六」と、仁左衛門(当時・孝夫)の小悪党「鬼門きもん喜兵衛きへえ」の夫婦は、フグ毒にあたった男の死体をネタにゆすりを企てる。悪のすごみと滑稽味の両方が魅力になっている役だ。

「土手のお六」=松竹提供

玉三郎は当時、前進座の五代目河原崎国太郎に教えを請い、国太郎から「女形は亭主役にしっかりついて行くことが大事よ」と指導されたが、「どういう意味?」と理解できなかった。

やがてコンビは「桜姫東文章あずまぶんしょう」「かみかけて三五大切」「絵本合法衢がっぽうがつじ」など南北作品で持ち味を発揮する。「東文章」は85年の米国公演でも絶賛され、翌年のパリ公演の「かさね」でも共演した。「海外で互いの芸と向き合い、共通の思い出が足跡になった」と振り返る。

半世紀を経た今、国太郎の言葉が身にしみる。「仁左衛門さんは6歳年上で世代的にもぴったり。長く残ってきたのは運命ですね。縁というのかな」

今年は「源氏物語」で市川染五郎と、「天守物語」では市川団子と共演し、若手を導いた。「元気な若い人たちが日々成長する姿にエネルギーをもらう。彼らが30~40歳代になった時、どんな作品を演じるのか、想像することが活力です」

自らの芸については「後世に残るなんて考えていない」とさばさばした口調で語る。「見てくださったお客様の記憶に残れば十分。一期一会で楽しんでいただければ。今やりたいことをやって、精いっぱいを見ていただくしかありません」

「長崎十二景」 =撮影・岡本隆史、松竹提供

◇ 大阪松竹座1月公演 〔2025年1月〕3~8日の「坂東玉三郎初春お年玉公演」は、玉三郎による舞踊公演で「口上」と地唄舞「残月」、竹久夢二の絵をモチーフにした新作舞踊「長崎十二景」。玉三郎は地唄舞の魅力について「詩のように10分や15分の短い時間で世界が完結している。雨だれのように三味線のばちが鳴り、曲の世界に入っていけるのが醍醐だいご味です」と語る。
 11~26日の「片岡仁左衛門 坂東玉三郎初春特別公演」は、「於染久松色読販」から「土手のお六、鬼門の喜兵衛」の場と清元舞踊「神田祭」。お年玉公演は3階席の一部を1500円に設定している。☎ 0570・000・489。

(2024年12月25日付 読売新聞夕刊より)

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