大阪の夏芝居といえば、真っ先にこの演目が思い浮かぶ。うだるような暑さと高津宮(大阪市中央区)の
「大阪の一番暑い季節にぴったりの演目です」。大阪・国立文楽劇場「夏休み文楽特別公演」で、この演目の主人公・団七を遣う吉田玉男が語る。〔2023年〕7月の文化審議会答申で「人間国宝」に認定される見通しとなった。入門から55年、
師匠の初世吉田玉男(1919~2006年)も人間国宝だった。2015年に名跡を継いだ。その芸風を受け継ぎ、豪胆で品格ある時代物の主人公や、心中物の柔和な二枚目役に定評がある。
「夏祭」は、男気あふれる団七が、金もうけに走る
師を手本に「腰を据えてどっしりと大きく動き、(見得の)決まり、決まりをしっかりと見せる」と心がけ、直伝の極意「手にした刀の切っ先をグッと内側に向けて力を込める」も踏襲している。
「60歳には60歳の芸、70歳には70歳の芸がある」。80歳代まで舞台に立った師は、口癖のようにそう言った。動きが自在で活力みなぎる60歳代、派手な動きを抑え、力を内に蓄えた「
「もっともっと師に近づきたい。受け継いだ
夏祭 浪花 鑑 初演は江戸中期の1745年、大坂・竹本座。堺の魚売り・団七は、大鳥佐賀右衛門の家来とけんかになり、投獄されてしまう。玉島
兵太夫 の尽力で釈放された団七は、恩返しに兵太夫の息子・磯之丞 と恋人・琴浦の仲を取り持つ。しかし、琴浦に横恋慕する佐賀右衛門は団七の舅・義平次を使って、琴浦を誘拐する。団七は義平次を追いかけ、説得を試みるが……。国立文楽劇場「夏休み文楽特別公演」の第3部サマーレイトショーで〔2023年8月〕13日まで上演中。第1部は親子劇場「かみなり太鼓」「西遊記」。第2部は名作劇場「
妹背山 婦女 庭訓 」四段目。(電)0570・07・9900。
(編集委員 坂成美保)
(2023年8月9日付 読売新聞夕刊より)
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