2022.4.14

【歌舞伎インタビュー】三味線の音を聞くと、帰って来たと思いますね―「四月大歌舞伎」片岡愛之助さん

歌舞伎座(東京・東銀座)の「四月大歌舞伎」(4月27日まで)、第一部の『天一坊てんいちぼう大岡政談おおおかせいだん』で、片岡愛之助さんが初役の山内やまのうち伊賀亮いがのすけに挑んでいる。今年初めてとなる歌舞伎座出演。「同世代」の尾上松緑さん、市川猿之助さんとの共演だ。(聞き手は事業局専門委員・田中聡)

――愛之助さんにとって今年初めての歌舞伎座への出演。『天一坊』は今まで縁の無かった演目だと思います。どんな心持ちで舞台に臨んだのでしょうか。

愛之助 「網代問答」が有名なのは知っていましたが、先輩方の舞台も拝見したことがありませんでした。演出も付かないので「どうしましょうか」と松緑さんに電話したら、「(猿之助さんと)3人で作っていきませんか」と言われて。

松緑さんとはご自宅に遊びに行っていた仲ですし、猿之助さんともいろんな舞台でご一緒してますし、お互い考えていることはよく分かりますから。「ここで三味線はいらないんじゃないか」とか「合方はこうした方が」とか、先輩の舞台のビデオを参考にしながら、稽古場で話し合って作ったのが、今回の舞台です。コロナ禍の中、こういう通し狂言がようやくできるようになったのが嬉しいですね。

令和4年4月歌舞伎座『天一坊大岡政談』山内伊賀亮=片岡愛之助(©松竹)

『天一坊大岡政談』は実際にあった「事件」をもとにした河竹黙阿弥の作品。紀伊国の修験者・感応院の弟子、法澤(猿之助)が顔見知りのお三を殺して、「将軍吉宗の御落胤ごらくいんの証拠」を奪い、天一坊と名を改めて「御落胤」になりすます、という話だ。天一坊が偽物だと疑うのが、名奉行・大岡越前守(松緑)。その越前守と天一坊の腹心・山内伊賀亮が丁々発止のやり取りをする「網代問答」が大きな見せ場になっている。

――やはり見せ場は、「網代問答」でしょうか。山内伊賀亮という役は、どういう所がポイントだと思っていらっしゃいますか。

愛之助 伊賀亮というのは、単なる敵役ではないんです。もしも天一坊が天下を取ったら、政治を差配する、国家の中枢になるような存在なんです。頭は切れるし、肝も据わっている。立場が違っていれば、とても有能な官僚になりそう。そんな雰囲気を出すのが難しいですね。

令和4年4月歌舞伎座『天一坊大岡政談』山内伊賀亮=片岡愛之助(©松竹)

――「切れ者」の「悪役」というと、何となくドラマ「半沢直樹」の黒崎を思い出してしまいますが(笑)

愛之助 そうですね(笑)。有能な人の役は大変なんですよ。なにしろ、しゃべることが難しい(笑)。台本をもらって、見たこともないような言葉が多いので(笑)、覚えるのが大変ですよ。松緑さんの名奉行、猿之助さんのカリスマ的な悪役、とても魅力的な配役だと思います。

大事にしたい「歌舞伎への想い」

――ここ数年、年間の仕事のペースは、歌舞伎半分、テレビなどの映像半分、という感じですか。

愛之助 そうですね。毎年決まって開けさせて頂いている公演や、毎年12月の京都・南座の顔見世興行には出させていただきたいと思っております。それ以外は、歌舞伎と映像半々で、と思っています。

……とはいっても、今回はちょっと大変でした。3月29日に国立劇場小劇場(東京・半蔵門)での踊りの会「己亥の会」に出ることが前々から決まってまして、これが『天一坊』の稽古と重なったんですね。踊りの会の舞台稽古、歌舞伎座の稽古、踊りの会本番――という感じでしたので……。

――歌舞伎座の舞台に立つと、「ホームに帰ってきた」という感じはありますか。

愛之助 やっぱり三味線の音を聞くと安心しますね。子供の頃から歌舞伎の舞台で育ってきたので、「帰ってきた」とホッとします。

映像の仕事をしているのも、「私という存在を通じて歌舞伎をより多くの人に知ってもらいたい」という想いがあるからなんですよ。もちろん、人気のあるドラマに出て、当代一流の俳優さんたちと共演することで、役者として得るものはたくさんあるんですが、それだけじゃないんです。

『祇園祭礼信仰記 金閣寺』此下東吉後に真柴久吉==片岡愛之助(©松竹)

私も50歳になってしまい(笑)、これからは先輩に教わってきたことを後輩に伝えていく、という立場にもなってくる。歌舞伎座の「團菊祭だんきくさい五月大歌舞伎」では『金閣寺』で此下このした東吉とうきちを演じますが、叔父(片岡仁左衛門)からしっかり教わろうと思っています。役者として背負っていくものは年々大きくなっていきますが、「歌舞伎への想い」は今後も大事にしていきたいと思っています。

歌舞伎座・四月大歌舞伎のサイトはこちら https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/750

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