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2023.7.30

国立文楽劇場(大阪市)で体験教室を初開催…若者らが魅力を再発見 8月には第2弾も

吉田簑二郎(右端)ら人形遣いから、操作術の基礎を学ぶ参加者=いずれも河村道浩撮影

人形浄瑠璃文楽の太夫、三味線、人形遣いの「三業」の芸を、ベテラン演者から直接学ぶ体験教室「やってみる文楽」が国立文楽劇場(大阪市中央区)で初開催された。7月17日の初回は、13~27歳の男女19人が参加。8月17日には小中学生を対象にした2回目が開かれる。

今年度は、文楽の担い手を育てる伝承者養成制度の受講生が集まらず、将来の後継者不足が危惧されることから、若者に文楽の魅力を知ってもらう機会にと、劇場が企画した。

初回は、参加者が3班に分かれて、講師役の豊竹藤太夫、竹沢宗助、吉田簑二郎らから、文楽の「三業」の基本を教わった。

人形の手の繊細な動きを教える吉田簑二郎(右端)

人形遣いの体験では、ペットボトルを人形の足に見立てて動かし、歩く、立ち上がる、座るなどの動作を習得。3人一組で2体の人形を動かして、おもづかいと左遣いが息を合わせて、手をたたく動作や人形同士が抱き合う動作にも挑戦した。

太夫の基本である発声法も学んだ。藤太夫が「丹田たんでん」と呼ばれる腹部の位置を示して「ここに力を入れて」と指導し、参加者は腹部に力を入れて大きな声を出す訓練を繰り返した。三味線の稽古では、ばちを握り、実際にツボを押さえながら、3本の糸を順に鳴らして演奏した。

竹沢宗助(左)の指導で、ロビーには子どもたちの三味線の音色が響いた

最後に、参加者の代表が小ホールの舞台に上がり、藤太夫ら演者と一緒に「伊達娘だてむすめ恋緋鹿子こいのひがのこ」の一場面を上演した。

兵庫県西宮市の中学1年女子生徒(13)は「これまで5回ほど文楽の公演を見て、人形遣いによって命を吹き込まれる人形の姿に感動したので参加した。自分で動かしてみて、動かし方次第で、人形に様々な表情が生まれることに気がついた」と話していた。

(編集委員 坂成美保)

(2023年7月28日付 夕刊大阪版より)

女形人形を持って、操作を学ぶ参加者
裃(かみしも)を着けた参加者に三味線の奏法を教える鶴沢寛太郎(左)
おなかから声を出す太夫の発声を教える豊竹藤太夫(左)
体験教室を開いたねらいは…養成受講生ゼロの危機感

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