新年を迎え、東京と大阪の劇場で歌舞伎や文楽の公演が始まった。鏡開きも行われ、初芝居を見物する人々でにぎわった。
東京・国立劇場では3日、初春歌舞伎公演「通し狂言
あいさつを求められた尾上菊五郎さんは、酒だるの上に置かれた木づちをマイクと間違えて手に取るギャグを披露して笑いを誘い、「今回のお芝居も初春らしく、序幕から大詰までいろいろな趣向が凝らしてございます」と話した。中村時蔵さん、尾上松緑さん、尾上菊之助さんと、「1、2 の 3!」のかけ声に合わせて木づちを振り、鏡開きを行った。(登壇者によるあいさつ全文は、文末に掲載します)
歌舞伎では、鎌倉時代の曽我兄弟の仇討ちを題材にした作品群「曽我物」を正月公演で上演する伝統があり、今回は四世鶴屋南北による「
歌舞伎座や新橋演舞場、浅草公会堂でも歌舞伎の公演が始まった。
大阪・国立文楽劇場でも3日から初春文楽公演が始まった。
開場に先立ち、劇場前には特設舞台が置かれ、この公演で襲名披露を行う六代目竹本錣太夫さんが「今日が錣太夫の第一歩です。今年はねずみ年ですので、大阪、文楽にお越しくださる方がねずみ算式にどんどん増えて、にぎやかになりますことを願っております。今後とも大阪を、文楽をごひいきください」とあいさつ。第一部の「七福神宝の入舩」に登場する文楽人形の布袋、福禄寿とともに鏡開きを行い、来場者らに日本酒を振る舞った。近くの黒門市場からは「にらみ鯛」として縁起物の大きなタイが2匹届けられ、披露された。動画はこちら。
公演は、宝船に乗った七福神が胡弓や獅子舞などの芸を披露する華やかな「七福神~」で幕開け。吃音の絵師とその妻の情愛がドラマチックに描かれた「傾城反魂香」では、錣太夫さんの襲名披露口上が行われ、豊竹呂太夫さんが錣太夫さんとの修業中に起こったユニークなエピソードを披露し、客席を沸かせた。「七福神~」の劇中で錣太夫さんの襲名を祝うのぼり旗が登場したり、ロビーには正月飾りがあしらわれたりと、劇場は新年と襲名を寿ぐ華やかなムードに包まれていた。
近くの大阪松竹座でも、歌舞伎の公演が始まった。
皆さま、明けましておめでとうございます。初春、初歌舞伎に、例年のごとく、国立劇場に出演させていただきまして、こんなにうれしいことはございません。今回のお芝居も、また初春らしく、序幕から大詰までいろいろな趣向を凝らしてございます。どうか存分に初春歌舞伎を楽しんでいただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
皆さま、時蔵でございます。明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。令和2年、2020年の初春歌舞伎も、めでたくこの国立劇場で一年の幕を開けることができました。大変うれしく思っております。
私はいろんな役、二役やっておりますけれど、役の内容についてしゃべるとお隣の方(菊五郎さん)が怒りますので、見てのお楽しみということでございます。一座みんな序幕から大詰まで一生懸命務めておりますので、どうぞ楽しんでご覧になっていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
明けましておめでとうございます。尾上松緑でございます。初日から
(一度、壇を下りて)新年のごあいさつの前に、昨年12月8日に私、けがをいたしまして、(新橋演舞場で上演した歌舞伎「風の谷のナウシカ」の)8日の夜の部のチケットを買っていただいた方、ご覧いただけなくて本当に申し訳ございませんでした。そして、一部演出を変更して途中までさせていただきましたけれども、途中からだいぶ回復してまいり、演出もだいぶ元通りになりまして、千穐楽まで務められましたこと、これも本当に皆さま方のおかげと心より御礼を申し上げます。
けがの具合につきましては、千穐楽が終わってから病院に行きましたところ、骨も無事に付いておりまして、あとはリハビリをしてちゃんと動くように、これからじっくりとリハビリを心がけてまいりたいと思っている次第です。まずはご報告をさせていただきたいと思っておりました。
(改めて登壇して)新年明けましておめでとうございます。今年もこの国立劇場で新年を迎えられましたことを、本当に幸せに思っております。今年、私は白井権八を務めさせていただいております。なぜかこのお芝居の趣向では、権八と小紫が両方出てきまして、小紫も私が演じるという、途中で権八が女になるという趣向になっておりますので、(“ネタバレ”に「ピピピピ!」と時蔵さんがツッコミ)まあ、筋といいますか、ご趣向を楽しんでいただくということで、いろんな趣向が詰まっておりますし、初春のお正月気分を味わっていただければと思っております。
昨年も古典歌舞伎を一つ一つ大事に務めさせていただきまして、今年もその心がけを忘れることなく、そして新しいことがあれば、しっかりひるまず挑戦していきたいと思っておりますので、どうぞ1年間よろしくお願いいたします。
新年明けましておめでとうございます。皆さまには、令和初めての新春をお健やかにお迎えになられたことと存じます。本日は国立劇場初春歌舞伎公演、初日に早くからご来場賜り、誠にありがとうございます。本年も、尾上菊五郎さんを中心とする一座をお迎えすることができました。今年の初芝居は、「菊一座令和仇討」を上演いたします。国立劇場では8年ぶりとなる両花道を使い、様々な趣向を盛り込んで、お正月らしい華やかな舞台になっておりますので、どうぞご期待ください。また、幕間には、獅子舞や曲芸などの催しもございます。どうぞ初春の国立劇場をごゆっくりお楽しみください。本年もごひいきのほど、何とぞよろしくお願い申し上げます。
(読売新聞紡ぐプロジェクト事務局 内田淑子、沢野未来、写真も)
0%