日本彫刻の最高傑作の一つとされる奈良・聖林寺の国宝「十一面観音菩薩立像」を紹介する特別展「国宝 聖林寺十一面観音―三輪山信仰のみほとけ」(読売新聞社など主催)の報道発表会が2月27日、東京国立博物館(東京・上野)で開かれた。
本展は6月16日~8月31日に同館、来年2月6日~3月28日に奈良国立博物館(奈良市)で開催。聖林寺十一面観音が東京で公開されるのは初めて。奈良・法隆寺の国宝「地蔵菩薩立像」など計約30件の名品を披露する。文化庁、宮内庁、読売新聞社による「紡ぐプロジェクト」の一環で、政府が展開する「日本博」の企画にも採択されている。
(2020年2月28日付読売新聞朝刊より掲載)
東京国立博物館で開かれた報道発表会には、東京国立博物館の担当者や聖林寺の倉本明佳住職らも出席し、天平彫刻の至宝とも言われる十一面観音菩薩立像(以下、十一面観音)をはじめ、展覧会のみどころを紹介した。
冒頭、井上洋一副館長が、十一面観音は江戸時代まで、三輪山(奈良県桜井市)をご神体とする大神神社に付属する寺にあったが、明治政府の神仏分離令による廃仏毀釈を逃れるため、慶応4年(1868年)に聖林寺へと移された歴史を説明。 今回の展覧会では、仏教が伝来する以前から続く三輪山信仰に関する展示も行うといい、「日本の美、信仰が凝縮された展覧会になる」と強調した。
今回の展覧会では、仏教が伝来する以前から続く三輪山信仰に関する展示も行うといい、「日本の美、信仰が凝縮された展覧会になる」と強調した。
続いて倉本住職が、「十一面観音は1300年間、奈良から出られたことのない仏様で、疫病や自然災害を治めてくださる。今、コロナウイルスの感染が問題になっていますが、よく拝んでいただければ疫病を克服できるのではと思います」と述べた。
聖林寺では、今回の展示の間に、十一面観音の収蔵庫の耐震工事を行う予定にしているといい、「工事には莫大な費用がかかる。全国の皆さまにもご寄進をお願いしたい。ぜひ多くの方に携わっていただきたい」と呼びかけた。
展覧会を担当する同館の浅見龍介企画課長は、十一面観音と同時期に大神神社の寺内にあり、その後離ればなれになった奈良・法隆寺の国宝「地蔵菩薩立像」や同・正暦寺の「日光・月光菩薩立像」のほか、三輪山の禁足地からの出土品など、主な展示物を紹介。三輪山信仰を深く理解できるよう、会場内に大神神社の「三ツ鳥居」(重文)を原寸大に再現するプランも披露した。
十一面観音については、「お顔は険しく、手にも表情がある。奈良時代の台座が残っているのは非常に珍しいが、台座の花弁のそりも非常に美しいので注目してほしい。(像の)前に何分いても飽きず、体調も良くなるほどの美しさです」と強調し、明治時代に日本の古美術を保護した米国人の美術研究家・フェノロサもその美しさに感激し、像を入れる厨子を聖林寺に寄進したエピソードを紹介した。
会期が東京オリンピック・パラリンピックの開催時期に重なることから、井上副館長は「日本を訪れる海外の方にも、日本の伝統、文化に触れていただきたい。この展覧会を通して、日本の美や風土、歴史、自然などの日本文化を理解し、関心を高めていただければ」と話していた。
オリンピック・パラリンピック期間中の7月26日から8月9日、8月25日から31日までの月曜から木曜、日曜は午後7時まで開館する。
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/shorinji2020/
(紡ぐプロジェクト事務局)
0%