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2026.2.4

絵画修理に欠かせない「ふのり」— 三重県鳥羽市立海の博物館で特別展

ふのりを使って製作された松阪木綿などが展示されている特別展「ふのりと日本人」

文化財の絵画などの修理に欠かせない「ふのり」をテーマとした特別展「ふのりと日本人」が三重県鳥羽市立海の博物館で開かれている。〔2026年〕3月31日まで。

漁村の人々が採集するマフノリ、フクロフノリなどの海藻はふのりと総称され、古代から食用だけでなく、煮て抽出するのりとして広く活用されてきた。平城京から出土した木簡から、伊勢志摩地方から「布乃利」が都に送られていたことがわかっている。江戸時代の記録によれば、女性の髪の整え、和服の洗い張り、布織物の製作、土蔵や壁の漆喰しっくい、筆の穂先の整えなど、暮らしの様々な場面で使われていた。

一方、国宝、重要文化財の絵画などの修理では、主に作品の表面を保護する「表打ち」と呼ばれる重要な工程で必ずふのりが使われ「ふのりに代わるものはない」と言われている。

ふのりを加工して保存しやすくした製品が「板布海苔いたふのり」。煮たり湯につけたりすることで、糊としてすぐに使用することができる。

しかし板布海苔の製造業者は高齢化や後継者不足で激減。文化財の修理に用いる板布海苔を製造する会社は全国で1社のみとなっている。さらに資源の減少もあり、存続が危ぶまれている。

伊勢志摩地方で製造された板布海苔。戦後まもない頃の包装紙も展示されている

特別展ではふのり利用の歴史や用途の多様性を伝える古文書、板布海苔を作るための道具、製作過程でふのりが使われる松阪木綿や伊勢型紙、熊野筆など約180点を展示。また、文化財修理の現状を、専門家による解説動画で紹介している。

平賀大蔵館長は「ふのりが日本人の暮らしにいかに深くかかわっていたか知ってもらい、板布海苔製造の存続について考えるきっかけにしてもらえたら」と話す。

入館料は大人(18歳以上)800円、学生(大学生以下)400円。同館内のカフェでは展示期間限定メニューで、ふのりを味わう海藻スープを400円で提供している。

(2026年2月1日付 読売新聞朝刊より)

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