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2026.1.26

文楽人形遣い 映画熱演 - 人間国宝・桐竹勘十郎

桐竹勘十郎(左)が出演した映画「道行き」の一場面(右は渡辺大知)

文楽人形遣いの人間国宝・桐竹勘十郎が、映画「道行き」に初めて俳優として出演した。気鋭の中尾広道監督が手がけ、ぴあフィルムフェスティバル(PFF)がプロデュースした作品。ニューヨークの日本映画祭「ジャパン・カッツ」で大林宣彦監督にちなんだ大林賞を受賞した。

文楽ファンで公演に通っていた中尾監督が、勘十郎に出演を依頼したのは「謙虚な語り口とたたずまいにかれたから」という。勘十郎は当初、「人形なしでは何もできません」と固辞したが、「60年近く人形遣いとして生きてきた。自分から人形を取ったら表現者として何ができるんだろう。やるだけ、やってみよか」と自分を試すつもりで引き受けた。

幼い頃から恥ずかしがり屋で、人前が苦手な性格。実家のアルバムには、俳優の姉・三林京子や父母の後ろに、ひっそりと写った写真ばかりだという。「人形遣いが楽しいのは、自分の前に常に人形がいてくれるから。お客さんの前でも怖くない。人形なしで自分にどんだけのことができるのか」と不安を抱えて撮影に臨んだ。

舞台は、江戸時代の陣屋町の風情を残す奈良県御所ごせ市。撮影のほとんどが御所市で行われた。古民家を購入して改修工事を進める主人公・駒井(渡辺大知)と、元所有者・梅本(勘十郎)の交流を80分のモノクロ映像で見せる。中尾監督からは「普段通りに話してください」と注文された。

古民家の室内、中庭、蔵を駒井に案内するシーンは長回しで撮影され、勘十郎演じる梅本は「この窓はね、うちの名前が梅本やさかい、梅形にこしらえてもろたそうです」と関西弁で説明する。「失敗が許されないでしょう。カンペは使わず、必死で覚えた。俳優さんって大変な仕事やなと尊敬の念がわいた。人形を動かすのはずっと楽。人形のありがたみを痛感しました」

映画では、文楽の景事物「面売り」の舞台映像も流れる。勘十郎が自分の台本に書き込んだ文字を中尾監督が気に入り、出演者クレジットの字幕には勘十郎の手書き文字が採用された。2月から順次、テアトル梅田(大阪市北区)などで公開される。

(2026年1月8日付 読売新聞夕刊より)

桐竹勘十郎さん

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