日本美を守り伝える「紡ぐプロジェクト」公式サイト

2026.1.25

【修理助成 全国に広がる7】需要文化財「山水図襖」伝長谷川等伯筆(京都・隣華院蔵)

2026年度「紡ぐプロジェクト」修理助成事業

重要文化財「山水図襖」(伝長谷川等伯筆)のうち「冬景」(京都・隣華院蔵)

2026年度の「紡ぐプロジェクト」修理助成事業は、宮城県から重要文化財「瑞巌ずいがん寺本堂墨絵の間障壁画」(瑞巌寺蔵)、福岡県から同「不空羂索けんさく観音立像」(観世音寺蔵)、高知県から同「大威徳明王だいいとくみょうおう像ほか12件」(竹林寺蔵)が申請された。修理助成対象となった計7件はいずれも劣化が進み、絵画3件は本紙の亀裂やのりの劣化、仏像3件は漆箔しっぱく層の浮き上がりや虫食いなどが見られる。貴重な文化財を後世に伝えるため、素材を調査し、最善の修理方法を検討したうえで、1年~数年の作業に着手する。

等伯 四季の景観、情感豊か

桃山時代の絵師、長谷川等伯(1539~1610年)が60歳代で描いたとされる山水図の襖絵。巨岩や水面、樹木、中国風の人物などが移ろいゆく四季の景観として情感豊かに表現されている。

襖絵は、妙心寺の境内にある塔頭たっちゅう・隣華院の方丈(客殿)を飾り、豊臣秀吉の家臣・脇坂安治が1599年に同院を建立した際に等伯が手がけたとされる。部屋の東側から時計回りに「春夏景」「夏景」「秋夏景」「冬景」と季節が巡る構成となっている。

墨の濃淡を巧みに駆使することで四季の空気感が表現され、等伯の山水画の集大成と言われる。画風から中国・南宋の画家、馬遠ばえん夏珪かけいらの様式を学んでいたことがうかがえる。等伯の様式が確立される過程をたどることができる作品としても評価が高く、1962年に重要文化財に指定された。

長年、外気にさらされてきた影響から、紙の亀裂や墨の剥落などの劣化が進行しており、2017年から京都国立博物館で保管されている。22年度から「紡ぐプロジェクト」による助成を受けて順次、修理が進められており、これまでに「春夏景」「秋夏景」の計8面が修理された。

26年度からは2年計画で残りの「冬景」「夏景」の計12面の修理が実施される予定で、墨の剥落止めや本紙の裏打ち、断裂部の補強などの修理を進めていく。

(2026年1月11日付 読売新聞朝刊より)

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