間口の広い木造瓦ぶきの主屋や、格子状に
起源は江戸初期。農作に乏しい村の産業として考案された。木綿を絞り染めした手ぬぐいは、旅人たちの土産物として評判となり、歌川広重の「東海道五十三次」にも描かれた。近くの宿場・鳴海宿でも売られ、「有松・鳴海
「絞り」は糸で縛った部分が染まらない仕組みで、模様を染める。
一つの工程をその道を極めた職人が、たすきをつなぐように受け渡していく。図案を考え、生地に型紙を載せて、絵を刷る。布を糸でくくる。染色。糸を外す。凹凸のある生地を仕上げる。
藍色、ピンク、黄。浴衣の季節を前に、工房「
一枚の浴衣でも、花はピンク、葉は緑と色を変えられる。「染め屋は『色』が全て」。頼まれた色をどう再現するか。ピンクと一口にいっても、調合次第で千差万別。同じ速度でじょうろを動かさなければ、濃淡も出てしまう。一方で、染料を含んで重くなった生地を運ぶなど、体力勝負な面も。そんな中、脱水機の音に負けない楽しそうな声が響く。
三浦さんは大黒柱の夫が亡くなった後、趣味で絞り教室に通う女性に声をかけた。好奇心旺盛な高江洲さんは二つ返事で“弟子入り”。12年ほどになる。有松絞商工協同組合は、1970年代に約35社あった組合員が16社に減少。後継者不足が顕著だが、三浦さんは新たな力を借り、のれんを守っている。
3人は質の高いものを効率的に染める挑戦をいとわない。内田さんは「(三浦さんが)やり方を尊重してくれるおかげ」と語り、三浦さんは「息が合っているからこそ、いいものができるんです」と目を細める。
今年のまつりは〔2025年〕6月7、8日。反物、Tシャツ、ポーチなどが並ぶほか、染め体験もできる。有松に一足早い夏が訪れる。
(文化部 武田実沙子)
(2025年4月30日付 読売新聞朝刊より)
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