〔2025年〕4月13日に開幕した大阪・関西万博。会場では、世界的な課題の解決に向け、先端技術などが発信される一方、伝統文化に触れてもらう企画も数多くみられます。これまでの万国博覧会も、古美術を保護する契機や、工芸の技を世界に披露するきっかけとなってきました。今回の紡ぐプロジェクトでは、万国博覧会と文化財のかかわりの歴史をひもときます。
1900年のパリ万国博覧会では、帝室(皇室)と宮内省も出品に関わることとなり、最高の技を駆使した出品作を当時の帝室技芸員らに依頼した。これらの出品作は現在では、各作家の代表作に位置づけられ、日本の近代美術工芸史を考える上でも重要な作品となっている。
皇居三の丸尚蔵館(東京都千代田区)の五味
パリ万博への出品作の制作を依頼した1897年当時は、絵画、彫金、鋳造、彫刻、陶磁、
このうち、彫金による人物立像「太平楽置物」(
一方、春夏秋冬の風景を描いた4枚の日本画「
パリを会場とした万博は1900年のときが5回目で、交通機関と情報が発達、整備されたことによって過去最大規模で開催された。19世紀最後の万博として過去を顧みると同時に新世紀を展望する博覧会と位置づけられ、日本は積極的に参加した。五味さんは「明治天皇のご下命によって宮内省が組織的に万博出品の美術品制作に深く関わったのはこのとき限りだった」と指摘する。
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写真で紹介した「四時ノ名勝」、「日本貴紳殿舎計画図 二層楼南面 三層閣南面」、「七宝墨画月夜深林図額」、「瑍白磁彫刻画花瓶」 、「太平楽置物」は、「日本国宝展」の特集展示「皇居三の丸尚蔵館収蔵品にみる万博の時代」で公開中。
大阪・関西万博の開催に合わせ、国宝、重要文化財などを集めた特別展が関西地区の美術館・博物館で開かれている。
◆「日本国宝展」(読売新聞社など主催)
6月15日まで、大阪市立美術館(大阪市天王寺区)で開催中。130件以上の国宝を一堂に展示。「紡ぐプロジェクト」で修理を実施した「扇面法華経冊子」(国宝)、「黒漆平文大刀拵 」(同、展示は5月20日から)なども公開している。
◆「日本、美のるつぼ ―異文化交流の軌跡―」
6月15日まで、京都国立博物館(京都市東山区)で開催中。
◆「超 国宝―祈りのかがやき―」
6月15日まで、奈良国立博物館(奈良市)で開催中。
(2025年5月4日付 読売新聞朝刊より)
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